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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区〜幕間 清水 昔日の出来事 

   

「地雷」を食らい眠らされてしまった清水は、「夢」を見ていた。それは、ずっと昔に封じ込められた、戦いの中で自分に宿った「力」と、それを遥かに凌ぐだけの能力の持ち主との遭遇の記憶でもあった。

 

 ……京一、おい、京一! 
 清水は、鼓膜を揺らす声でまぶたを開けた。
 生温かい風、むせ返るような草の臭い、そして湿った空気。
 どれも、慣れっこになり過ぎて、まるで自分の体の一部のように思える。辺りを支配する銃声、人や獣の叫び声。清水は、眠り過ぎていたらしいことに気がついた。
「やれやれ、撤退前の最後の一仕事か。司令官殿も精が出る。今更戦功を立てても、ろくなボーナスは付かないだろうに」
 清水は、自分を揺さぶり起こした友人に向かって、にやりと頬を歪めてみせた。
 いくらこの戦域を支配する敵が特徴的で強力だろうと、自分たちがやられるはずはないという確信を、清水は、数十回の作戦で得ている。
 黒田とか言う、あの司令官に率いられてからと言うもの、清水たちは、敵が何をしようとしているのか、どう攻めてくるのか、そして、どうすれば倒せるのかが、直感的に分かるようになっていた。しかも、自分や他の誰かの直感的情報を、司令を介することで、他の人間に克明かつ詳細に伝達することさえ、できるようになっていたのである。
 黒田司令官の、常人離れした武器の扱いの巧みさと、指導力のせいもあって、他の部隊が怯え、苦しんでいるこの戦場での闘いの全てが、清水たちにとっては、全く簡単に成果を上げられるゲームになっていた。
 敵を倒すのは簡単だった。
 予め、敵の気配を察知し、注意の「網」を潜り抜け、後方から襲撃を繰り返すだけでいい。
 車両も支給されていたし、武器の射程も段違いに優れているとあれば、敵の攻撃で死者はもちろん、負傷者もほとんど出なかった。しかも、隊員の合計は百名を優に上回っている。
 清水たちに負ける理由など一つもなく、事実、今まで圧倒的な勝利を続けていた。
 「なぜ、いきなりこんなことができるようになったのか」だけが気になる程度で、この戦場では、絶えず、功績と賞金を積み上げることができていたはずだった。しかし、清水を見やる友人の顔は、今まで見たこともないような焦りの色に満ちている。
「どうしたってんだ、一体」

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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