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ラブストーリー

渚-nagisa-(22)

   

 校舎の玄関ロッカーで後ろから声を掛けられたタケル。聞き覚えのあるその声に気がつき、朝の挨拶を交わそうと後ろを振り返る。声の主は水森ハルカのはずなのだが……。

 

渚 第22話 高鳴り

 タケルと弘樹の前には、全く雰囲気の違うハルカが立っていた。以前、パーマがかけられていた長い髪は首の辺りまで短く切られ、ちりちりだった髪の毛は真っ直ぐ綺麗に伸びていた。時々海の方から吹く柔らかな浜風が、ハルカのその短くされた髪の毛を優しく揺らしていた。

 前は濃い化粧でキツイ表情をしていたハルカだったが、今は普通の高校生らしく、全く化粧をしていない。髪型のせいもあるのだろうか。ボブカットのハルカはタケルの目に以前よりも幼く映っていた。

 地面にすりそうなぐらい長かったスカートも、今ではキチンと校則で決められた長さのものを穿いていたし、真っ白なブラウスの胸元には、キチンと青いリボンが結ばれていた。以前と全く違い、どこからどう見ても真面目な高校生の姿である。

「変……かな……」

 ハルカが自信なさげな口調で呟いた。

 タケルはハルカの姿があまりにも変わっていた事に気をとられ、口を開けたままじっとハルカを見つめていた。

「おい、タケル、何とか言ってやれよ。水森だって恥ずかしいんだからさ……」

 呆気に取られているタケルを右ひじで小突きながら、弘樹がタケルにそっと耳打ちした。

「い、いや……全然、変じゃないよ……。変って言うよりもすごく似合ってる……」

 タケルは胸の高鳴りを抑えられないでいた。今のハルカの姿は、タケルにとっての理想像そのままの姿なのだ。

 ハルカはタケルの言葉を聞き、恥ずかしそうにただ俯いていた。タケルはじっとハルカを見ていた。

 予鈴が鳴る十分前のチャイムが校舎の中に鳴り響く。

「早く教室に行こうぜ、一時間目の授業、中澄の英語だろ。あいつ、遅刻にだけは口うるさいからな……」

 そう言うと弘樹はそそくさとロッカーの方へ向かって歩き始めた。

 

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