幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

伝奇時代

生克五霊獣-改-19

   

 晴明と葛葉の子、蜃は厳しくしつけられ、元服はまだ遠くも立派な少年へと育っていた。
 その蜃に、富子の手が伸びようとしていた。

 時代伝奇ストーリー!

 

「蜃様、松兵衛が死んでも構わぬと?」
「それは、困るが松兵衛なら大丈夫であろう?」
 大丈夫なものかと、松兵衛は懐から手拭いを出すと、冷や汗を拭った。
「さて、この松をどうするかが問題だな。この年で尻を叩かれるのも嫌だし」
「元に戻すしかござらん」
「元に戻すったって」
 松兵衛が印を結ぶと、なにやら呪文を唱えた。松の木に旋風のようなものがおき、松は元の角度に戻った。
「おおお! 流石、松兵衛」
「感心しとる場合ではござりません」
 松兵衛は、蜃の首根っこを掴むと脇に抱えて尻を叩いた。
「痛い! 痛いぞ!!」
「事の重大さがわからん若には、まだまだお仕置きが必要です」
 蜃が顔を真っ赤にしながら暴れていると、縁側に弟が現れた。
「兄上、松兵衛と何を遊んでいるのですか」
「これが、遊んでるように見えるか! どんな遊びだ!!」
「そんな事より、ちょっとこっちに来てください」
「松兵衛に言ってくれ。というか、早く助けろ!!」
 弟は、いつもの事かと顔色一つ変えず、無視して部屋に戻った。その間の松兵衛のお仕置きは尚も続く。
 ようやくお仕置きが終わったところで、尻を押さえながら蜃は弟の部屋へと向かった。
「今日は、長かったですねえ。兄上は松兵衛とああしてじゃれ合うのがお好きでおられる」
 本気で言ってるのかと、蜃は顔をしかめた。
「松兵衛は、何故だか俺にだけ厳しい。お前も1度、お前の言うじゃれ合いをしてみるといいよ」
「あ、オレはそういう趣味ないんで。それより……」
 さらっと流された返事の中に、妙な違和感を覚えた。趣味?
 益々しかめっ面になった蜃の前に、1冊の薄い本を出した。今で言う、雑誌。弟は、ページをぱらぱら捲ると、ある場所を開いてみせた。
「兄上、ここ! 読んでみてください」
 言われた通り、蜃が読んでみる。
「なんじゃこれは」
「ね、面白いでしょ。行ってみましょうよ」
 そこにあったのは、街一番の美女、看板娘お蝶が働く定食屋の紹介だった。
「兄上も街一番の美女とは、どの程度のものか気になりませんか?」
「いやらしい奴だな」
 言いながらも、そのページに載せられたお蝶の似顔絵に魅入っていた。
「本当に、こんなに美人なのかのお」
「ね! 気になるでしょ!! 近いし、早速行きましょうよ」
 今しがた叩かれたばかりの、未だひりひり痛む尻を擦りながら蜃は言った。
「うーむ、憂さ晴らしにでも行くか」

 

-伝奇時代
-, , , ,

シリーズリンク