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恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・11

   

 白咲に返還する方法だが、ふとコンビニが目に入り妙案を思いついた。

 用意は整った。あとは球体にイメージを吹き込み一週間後へと飛んだ。

 ファミレスから覗いていると、白咲らしき人物が出てきた。いつもと恰好がちがう。それと顔を赤く腫らせているのが気になってしかたがないが、すぐにわかった。

 どうやらデートのようだ。白咲にもそういう日和はあるようだ。

 事態も終息したように俺は思った。これで未来に戻れば白咲が引き起こした悲劇は起きないだろう。

 俺のタイムトリップは終わりをむかえることになる。
 
 

 そして未来は動きだした…

 

 白咲はまだいるだろうか。アンチズの五人組が白咲を囲み強奪した裏路地へと急いだ。しかし白咲の姿はなかった。

 煉獄会の本部へとりあえず歩を進めた。

「いた」足取りが重そうに歩く惨めな男の後ろ姿をみまちがえることはない。「どうやってわたすか、それが難問だ」

 ちらっとコンビニエンスストアが目に入った。しばらくそのまま見つめている。何か思い浮かびそうだったからだ。

「そうか、ほんと便利だよな」

 一瞬で閃いた。俺も必死だった。これで奪われたブツによってこのエリアを抗争の火種にならずに済んでよかった。

 白咲はおそらくこっ酷くどやされているころだろう。しかし二日後にはプレゼントがサプライズで届く。

「俺に感謝しな、とりあえずこれで問題回避だ」

 俺の名前、住所、電話番号は偽名だが宛名は本物だ。煉獄会の白咲宛てにした。コンビニエンスストアをでると、すぐに路地裏に身を隠す。

 球体にイメージを吹き込む。一週間後になれ、と強く切望した。
 
 

 ファミリーレストランで俺は一人オムライスを食べている場面で目蓋を開けた。一瞬、今目覚めたかのようにびくっと、身体が反応を示したが店員やお客は少なく誰も気づいていなかった。

「ふー」ため息をひとつ吐いて、状況をたしかめる。「以前にもこのファミレスでオムライス食べていたときがあったが、そこに飛んだか」

 一週間後に飛んでいることはまちがいない。窓の外をみて煉獄会のビルを凝視している。

 するとタイミングよく姿を見せたのは白咲だった。歩いている。顔が赤く腫れているがいつものように軽装だった。ジーパンにTシャツ。だがジャケットをぶらさげるように手で持っていた。

「見たところあぶなっかしい武器を所持しているようにはみえない」

 レジで会計を済ませ尾行を開始した。駅前まで行くと俺は目の前の光景に絶句した。

 白咲が珍しく女性と待ち合わせていた。顔が腫れていたわけではない。折檻されて腫らしたわけではない。照れているときに頬を紅潮させるときのあどけない顔だった。

 どういう関係だろうか。茶髪の背中まである髪。フリルのミニスカートにサンダル。キャミソールといった露出度のある恰好のギャルだ。

「まぁ、恋人だったとしてもおかしくないよな…」

 沙良のほうがかわいい、と俺は思ったが価値観は人それぞれである。

「ああいう感じなら二人はお似合いだ」

 思い描いていた抗争も、いざこざも起きる気配はない。一週間前、アンチズから強奪され一時的に錯乱しただろうが、二日後には届いた代物に煉獄会の幹部は頬を震わせ白咲に吐き捨てているだろう。

 潔白が証明されたおかげで白咲はごきげんにデートを楽しんでいる。手を繋いで歩いている。おそらく初めてみる。笑顔の白咲を。

「ふん、人間らしいところもあるんじゃないか。これで未来に帰ることができる。これでなにも起きない。完全に事態回避の結末を俺はこの目で見ている」

 危うく、若僧どもに強奪されたブツがいくらくらいになるかは見当もつかないが、もし数百、数千万円とかで取り引きされているのであれば、やつらの命で引き換えになってしまうだろう。

 白咲はその責任をとらされるため、鉄砲玉になりクリスマスイヴの悲劇の引き金を引いた。

 それがいまこうして引き金を引くことはない幸福の時間軸へと歩みだしている。これで不幸な人生と感じた俺のタイムトラベルは終わりを迎えた。

 

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君がいない世界なら、僕は生きていけない 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話第9話第10話第11話第12話

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