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マスクエリア 第五覆面特区〜三章 光か影か(1)

   

清水たちがカジモトの元に向かったのと時を同じくして、金髪の巨漢、アラン・マクベスは、第五覆面特区のある事務所を急襲した。そこは、覆面商事の情報を調べ上げ、カジモトに提供した、情報調査企業だった。手勢とともに、圧倒的な力でもって事務所を無力化したアランは、新月にある「仕事」を命じる。

 

 第五覆面特区。特区の中でも、札付きの悪や、様々な「理由」を持った人間を収容し、戸籍や生存記録を剥奪し、特区の中で生活させることを目的に作りだされた「覆面特区」の中でも、ダーティな勢力と、生存手段のための格闘技や武術が最も盛んな地域の一つである。
 領有権を持っている「本土」の政府が決めた法律を律儀に守っているような人間はほとんどいないが、住人が独自に定めた「ルール」を守れない人間には過酷な制裁が科せられることになる、ルーズさと厳格さが入り混じる島であった。小競り合いが頻発するような事があっても、揉め事は様々な方面からの介入によって迅速に沈静化するし、素人がいざこざに巻き込まれる心配もほとんどない。
 日常茶飯事というにはあまりにも多い、治安及び行政関係者の汚職は厄介だが、もし耐えられなければ、対立する機関に陳情したり、あるいは、日常的に行われている募集に応じ、「関係者」として内側に潜ることで、圧力をかわすことも簡単にできる。
 「本土」に移住することが、法的には不可能になることを気にせず、中央政府内での出世や贅沢な野心などを持たなければ、そして、法令順守などとは全く無縁の「濁り」のある社会を許容できるのであれば、覆面特区は、かなり快適な場所と言うことができた。
 多くの住人たちは、隣人に文句を言ったり、自らの属する組織と対立するグループとの衝突をしながらも、何だかんだで、この島の暮らしを気に入っていた。
 「本土」に比べれば、ざっと半世紀は科学技術が遅れているらしいが、不便な分だけ良くも悪くもルーズで、格闘技や武術の類に関しては、本土のどの地域にも負けないほどの熱さを持つ洋上の人工島に、愛着を抱いていたのである。
 しかし、そんな奇妙なバランスを、完膚なきまでに、外部から来た、ある少数の勢力が破壊しようとしていた。

 

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