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マスクエリア 第五覆面特区〜三章 光か影か(2)

   

アランに言われるがまま、コンピューターの解析を開始した新月が見たものは、「覆面商事」対策の一点で、アランと共闘してきたはずのニュースタイルマフィアの情報だった。
つい先日までパートナーだった相手から詳細な情報を奪い取るという信義に反した行動を取り、なおかつ不当に佳代を酷使し、さらには「兄妹」の関係までをもからかいの対象とするアランに、新月はついに激怒したが、現時点の彼にとって、アランを打倒することは物理的に不可能だった……

 

 新月は、アランに指示される前に部屋の中に入り込み、目的の物を探し当てた。当局の締め付けが緩い、言わば「身内」びいきの第五覆面特区内の拠点とあって、ろくな隠蔽工作もなされていない。長年、マクベス一門の部下として仕えてきた新月にとっては、プレハブの隅にある、二センチほどの小さなボタンを探し当てることなど、全く簡単な仕事でしかなかった。
「目標物を発見、解析に移ります。オペレーターを、いや、その必要もありませんね」
 新月は、ボタンを押し、キーボード付きのモニターがせり上がってくるのを確認しながら、独り言を呟くように言ってみせた。アランは、ふん、と小さく鼻を鳴らして応じた。あえて目も合わせない新月の感情の内実を、彼なりに理解したらしい。
(しかし、それでもやはり、閣下なりに、というレベルでしかありませんね。彼にとっては、目に映る者全てが自分より格下の存在か、駒でしかない。そして、その事を隠そうともしないというのか)
 新たなる上司への悪感情とは関係なく、キーボードを叩く新月の手はスムーズに走った。
 そもそも彼には、目前のコンピューターに集中する必要などなかった。秘密のコンピューターだと言うのに、施されているプロテクトは市販品レベルの枠を超えるものではなく、しかも「特区基準」である。本土で一般に売られている解析ソフトを使えば、特別なパスワードをねじ込まなくとも、簡単に情報を引き出すことができるだろう。新月としては、拍子抜けだった。
 しかし、五分ほどの作業の後、モニターに映し出された情報を見た男は、衝撃とともに、アランの方を振り向かざるを得なくなった。

 

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