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マスクエリア 第五覆面特区〜三章 光か影か(3) 

   

 カジモトから提示された条件を飲み、再び機上の人になっていた清水たちは、ジャングルの中に開けた、巨大な大学の敷地のような場所に降り立った。
 「街」の名は「バトルシティ」。全世界から、百万人以上もの人が格闘技や武道を学びにくるという。そして、清水たちは、シティを統括する学長であり、カジモトの実弟であるベリコから、自分たちが選ばれた存在であり、適切な訓練を受ければ、マクベスを凌げるだけの素質があることを聞かされる。
 訝しがる清水だったが、くすぶっていた強さへの渇望に火を付けられ、更には、ベリコの丁重な態度を目にし、訓練に挑むことを決意するのだった。

 

「くそっ、言われた通りに行動しなくちゃならんのがもどかしい」
 静かな機内に、香西のぼやきが響いた。清水たちの耳にはもちろん届いていたが、あえて注意したり、同調したりしようとする者はいない。そんなことをしても、気力と体力の無駄だと分かっているからだ。
「しかし、何だって、こんな無茶な真似を」
 代わりに清水は、隣に座った高倉に向かって問いかけた。
 高倉の表情は明るくなかったが、冷静で落ち着いており、頼もしい雰囲気すら漂わせている。一か月前までの彼と比べ、段違いに、貫禄とでも呼ぶべきものが、体からにじみ出ていた。
「こうするしか無かったのさ。いくら予想よりもずっと提示額が大きく、暴利ってことでも契約は契約だ。つっぱねるのは無理だ、どう考えても。もしそんなことをしたら、悪名高いニュースタイルマフィアは、総力でもって、第五覆面特区全体を潰しにかかるだろう」
「それに、こういう解釈もできます。カジモト氏が、本当にこれだけの巨額と労力を投じざるを得なかったほど、『覆面商事』が強力であったとするなら、少なくとも私たちは、今こうしてカジモト氏に身柄を拘束されていることこそ、最良の状況なのではないかと」
 コーヒーを片手に、数十ページはあろうかというような、分厚い請求書に目を通していた榊原が、清水たちの話に割って入ってきた。冗談めかした感じの口調ではあったが、目に宿る光は真剣そのものだ。

 

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