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ラブストーリー

渚-nagisa-(26)

   

 ムカデ競走を制したタケルと弘樹は、手を取り合いながら喜んでいた。午後からハルカの出場するクラス対抗リレーがある。実の姉であるハルカに、『頑張れよ』と一言声を掛け、その場を立ち去ろうとし時だった。視線の先に犬猿の仲である松山茂の姿を見つける。中学時代、目が合っただけでも喧嘩をしていた二人。その場にいた誰もが、一触即発の事態を予想していたのだが……。

 

渚 第26話 円陣

 純也はじっと松山茂の方を見ていた。向こうはまだ純也のことには気がつかず、彼女である藤森あずさと談笑を続けている。

 一年ぶりに純也の目の前に姿を見せた茂は、少し身体が大きくなっていた。

 身長は一年前とあまり変わりはなかったが、肩の筋肉が発達し、肩幅が広くなったせいか、身体が大きく見えた。

 以前にも増してどことなく人を威圧するような雰囲気が漂っていた。

 松山茂には最近様々な武術を見につけるために躍起になっているという噂が流れていた。

 中学の頃、純也とケンカをし、それに負けて以来自分を強くするために始めた空手を身につけた。そのことで自信をつけた。

 他の武術にも興味を示し、つい最近、剣道を習得するために、弘樹の実家である中村道場へ入門してきたということを、純也は弘樹の口から聞かされていた。

 それ以来、茂の事を気にはしていたのだが、今の自分には関係のないことだと純也は自分自身に言い聞かせ、茂の事をなるべく考えないようにしていた。

 そう考えないと、普通の高校生らしく青春を謳歌している今の生活を壊してしまうのではないかという考えが、純也の中にはあったからだ。

 以前は特に何に対してというわけではないが、いつもイライラした気持ちを持って生きていた。そんな生活に戻りたくはないというのが今の純也の正直な気持ちだった。

 タケルや弘樹と交わっている間に、純也の心は少しずつではあるが本来の真面目な性格へと戻っていったのである。

 純也は茂に気づかれないようにその場を立ち去ろうと、ゆっくりと後ろを振り向き、あまり目立たないようにそっと人だかりの中へと紛れ込んだ。

 紛れ込んだ人だかりの中には、ムカデ競争を一位で終え、未だ喜び合っているタケルと弘樹がいた。弘樹はこっそり人だかりの中へ紛れようとしている純也に気がつき、声をかけた。

 

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