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ラブストーリー

晴れ、のち【1】

   

 いとこの二人が織り成す、心が温まる物語を贈ります。
 「雨、のち」の続編となっております。そちらを読まれずとも充分にお楽しみ頂けますので、まずはご一読くださいませ。
 お暇ありましたらぜひ、そちらもご賞味くださいませ。

***抜粋***

 汗の掻いたグラスが眩い。垂れた水滴が、ヤッコの指先を濡らす。
 それを横目に俺は、ふとある事が気になった。
「もしかして、退屈してるか?」
「……ん?」
 からん。
 ヤッコのオレンジジュースの氷が崩れて、いい感じの音色を上げる。ヤッコの顔が「何を言っているんだお前は」的な表情を浮かべて、俺を見返してくる。
 ヤッコの唇が少しだけ開き、何かを言おうとして、しかし何か不思議そうな面持ちで首を傾げて、
「んー。さーあ」
 と、ぶっきらぼうにそう言った。
 まるで、自分でもわからないとか、そういう感じで。

***  ***

 

 例えば遠足の前の日とか。
 遊園地に連れて行って貰えるとか、修学旅行があるだとか。

 それを楽しみに思っていない奴らはともかくとして、それなりに準備をしてうきうきわくわくと眠れない夜を送る俺のような奴は、当日はやっぱり晴れて欲しいと願うものだろう。
 雨が好きな奴はまぁ、この際置いておくとしてだ。
 要するに、記録大会の前日である昨日、陸上部所属であるいとこ、篠塚八重子、俺的あだ名ヤッコも、当日は晴れて欲しいなと思っているに違いないと思ったわけだ。

 がたん。
「うご」
 俺的有意義な思案時間が呻きと共に強制解除。目の前の視界が揺れて、ゲーム画面も一緒に揺れた。携帯の画面で打った額が痛い。角だったし。
 あまりの痛さに、額を机に預け、「くぅ」と唸る。肘を机の上に乗せてゲームなんぞしているからコウいう事になるんだなと、教訓を胸に刻む。
 ざわざわ、がやがや。
 他人の会話が雑音のように聞こえる、今現在。騒がしさが耳に痛い。気持ちがダークネスな方面に傾いているわけではなく、ただ聞いていないだけ。
 そんな、ファミレスにて。
 分厚いガラスに映る、机に突っ伏して無様な自分の顔が何とも不景気顔に見えた。そもそも不景気顔ってなんですか? とか自分に問うてみるが答えはでない。
「痛いし、んとに」
 額を持ち上げ、顎を机の上に置く。逆光できらりと光り、ゆらゆらと揺らぐ、コップの影に目を奪われる。コップになみなみと注がれている水は、表面張力で何とか零れないぎりぎり加減。
 持ち上げる余裕は、全くない。
 むぅ。
 ずい、ずい。
 顎を机に置いたまま、かなりの行儀悪さで顔を移動させる。唇をうにゅりと伸ばして、騒がしさの中、ずずずっと一口、水を飲む。

「行儀悪っ」
 誰かの声が聞こえる。気にしない。
 っ。
 ああ、これで喉が潤った。

 

-ラブストーリー

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