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ラブストーリー

LOTUS 〜Keep you warm〜

   

「ニーナ先生、こんにちはー」
「こんにちは、成田さん。さっきから藤堂さんが玄関ホールに貼りついていると思ったら、やっぱりあなたを待っていたのね」

LOTUS』 ―真理×日向子―
≪光輝*高等部1年生*11月≫

Illustration:Dite

 

 いいよー。
 わたしの手で良かったらー、
 いつでも真理ちゃんに貸してあげるー。

 成田夫妻が、子供たちを置いて、町内会の温泉旅行に出かけた連休前の土曜日。
 日向子は好きな色の毛糸を選んでもらうために、真理を久々に自宅に招いた。実は半月ほど前、近所のおばさんが「押入れに山ほどあったのよォ、日向子ちゃんだったら使ってくれるかと思って」と、段ボール1箱分もの毛糸をプレゼントしてくれたのである。
 箱のなかには、ちょっぴり古びてはいるものの色とりどりの毛糸が山ほど入っていて、手芸好きな日向子を喜ばせた。日向子はこの大量の毛糸をどうしようかと考え、やがてこれを有効利用して、光輝と瑠音と真理に、クリスマス・プレゼントを作ってあげようと思いついた。
 本当は何か欲しいものを買ってあげられれば良いのだが、日向子の通う女学院はよほどの事情がない限りアルバイトが禁止されているため、親からもらう小遣いだけでやりくりする身では、なかなか思うようにはいかないのである。特に12月は瑠音の誕生日もあるため、頭の痛いところなのだった。
「はーい、真理ちゃーん。このなかから好きな色を選んでねー」
「こりゃまた大漁だね」
「そうなのー。こーちゃんとるーちゃんのマフラーはもう編みはじめてるんだけどー、真理ちゃんにはねー、ボタン付きのショールを編んであげようと思うんだー」
「ショール?」
「そうだよー。ここでボタンを留めるとショールになってー、広げるとブランケットになるのー。ほらー、こういうのー。真理ちゃんに似合うと思うんだー」
 日向子が持ってきた『はじめてさんの手編み小物』という手芸本をチラ見して、真理は再び毛糸の山に目をやった。そうして再び毛糸の山を物色しはじめたが、完成品がうまくイメージできなかったのか、やがて肩をすくめて「ヒナが選んでよ」と下駄を預けた。
「わたしが選んでもいいのー?」
「うん。そのほうが嬉しいな」
「じゃあねー、真理ちゃんにはねー……えっとー、このオリーブ色なんてどうかなー。太めの毛糸だからー、ざっくり編むとかわいいと思うんだー」
「ヒナの見立てなら、どんなものでも喜んで」
 真理はニコリと笑うと、「それよりも」と日向子のいつでも温かな手を捕まえた。
「アタシ、ちょっと寒いんだよね」
「ほんとー、ごめんねー。エアコンの温度、上げてくるねー」
「それは電気代がもったいないからさ、ココに座ってよ。くっついていれば、あったかいと思うんだ」
 そう言って真理が示したのは、自分の膝の上。
 日向子は「わたし重いからだめー」と渋り、ためらっていたが、真理は有無を言わさず日向子の手を引き寄せた。そうして自分の膝の上に横向きに座らせると、幸せそうにむぎゅっと抱きしめた。
「ふふ、あったかい。ヒナ暖房v」
「真理ちゃーん、重くないのー?」
「軽い、軽い。ヒナったら何食べて生きてんのってカンジ」
 真理は日向子が逃げないよう、抱きしめる腕にさらに力を込めると、なんという「ついで」だろうか、日向子の胸にぽすっと頬を押しつけた。
「あれ……ヒナ、なんでこんなにドキドキしてるの?」
「ま、真理ちゃんがー、こんなことしてるからだよー」
「へえ、そうなんだ」
 真理はクスリと笑うと、心音の速い日向子を愛しく抱きしめた。もちろん、自分の心音も恥ずかしいくらい速くなっているのだが、幸い、日向子の耳には届かない。こんなことくらいでドキドキしてしまうのもどうかと思うが、互いの胸の高鳴りの意味は、きっと同じなのだろう。

 

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