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SF・ファンタジー・ホラー

風車のまちのユートピア<3>

   

アルカディアはギーナの体を検査する。
いくつかの事実が明らかになる。
真実はまだ霧の向こう…。

ヒトとヒトならざる者。
死者と生者。
思惑がすれ違う――。

 

 ルーヘンが“仕事”で家を留守にするのは、ほんの数時間。
 余裕はあまりない。
 居間のソファにギーナを座らせ、アルカディアは簡易医療検査セットを取り出して、手際よく作業を進めた。
 ギーナは素直に各種の検査を受けながら、のんびりとした口調で、アルカディアに話しかけた。

「自分が機械でないことは、ぼくは当然、最初から知ってたわけだけど――」
「ええ」
「アルカディアも知ってのとおり、ルーヘンは、ぼくのこともアンドロイドだと思ってる」
「そうみたいね。……もっとも、あなたが彼の前に現れたときから、あなたの外見は変化していないから、機械に見えても無理はないと言えば、そうかも知れないわ」
「怪我をしたりしないように、細心の注意を払ってきたよ。髪も爪も、伸びたことをルーヘンに気づかれないように、こまめに切ってた。ルーヘンは毎日八時間はたっぷり眠るようにプログラムされているから、彼に見られて不都合なことは彼が眠っているあいだに済ませたし、ルーヘンはあのとおり頭がちょっとのんびりだから、ぼくと彼のあいだに大きな違いがあっても、そもそもの機械(カラダ)の作りとプログラムの差だと言えば、それですぐに納得してくれた」
「ギーナは賢いわね」
「ほとんどが、父さんからのアドバイスや指示だよ」
「そう」

 アルカディアが採血道具を取り出し、しばらく二人は無言で、医師と患者の役割に徹した。

 針を抜いたあとの小さな傷口を消毒し、細胞再生テープでとめる。
 そうしながら、アルカディアが言った。

「あとで尿も採ってちょうだい」
「分かった」

 

-SF・ファンタジー・ホラー

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