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SF・ファンタジー・ホラー

風車のまちのユートピア<4>

   

風の吹くまちに、また一人のよそ者の青年が現れた。
二年より以前の記憶を失っているその青年は、おととい届いたという亡き博士からの手紙を手に、ルーヘンたちの暮らす家を訪れて…。

 

 夜半に雨の上がった、次の日の昼下がり。
 風の吹くまちに、また、見知らぬ男が現れた。

 バス停でバスを降りたその人物は、黒に近いこげ茶色の髪に青い瞳、人なつっこい表情の若い男だった。
 彼は、両手に旅行鞄を提げて、ときおり手描きの地図で道を確認しながら、まちはずれの家へと歩いていった。

 その行動は、アルカディアがこのまちへやってきた日の様子と、よく似ていた。
 が、一つ違うことは、彼の手にしていた地図が、アルカディアの持っていたものよりも大雑把で分かりにくいものであったということ。

 青年は、道に沿った畑の脇に腰掛けて昼食を使っていた百姓夫婦のところへ近寄っていくと、鞄を下ろして帽子を取って、ぺこりと頭を下げて、訊ねた。

「すみません。コルネール・クルシュマン博士の住んでいた家って、この辺だと思うんですけど……」

 壮年の百姓夫婦は顔を見合わせ、夫のほうが、青年に答えた。

「あの家を探してるなんて、あんたも“神を冒涜する者”かい?」
「神を……? ああ、アンドロイドのことですか」

 青年はやや苦笑いで、否定した。

「ぼくはふつうのヒトですよ。その証拠に、ちゃんと子どものころの写真もありますし」

 

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