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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(9)

   

雄一郎と黒田マユとの関係を聞き出すため、二人で行きつけの店で飲んでいた創は、雄一郎からとんでもない本心を聞かされる。創の妻である智美に興味があるというのだ。真剣な顔で話す雄一郎。
冗談とは思えない雄一郎の突然の告白に創は胸の奥をざわつかせていた……。

 今回のお話は『創視点』です。先日のショッピングセンターの一件に雄一郎が絡んでいた事を、黒田マユから告白された創。今回はそれを問いただすために雄一郎を飲みに誘ったあとから始まります。
 雄一郎の口から出た突然の告白。創の妻である智美に気があると言い放つ雄一郎でしたが……。

 

「そんな深刻な顔すんなや。冗談に決まってるやないか。冗談や、冗談。ホンマ、創は騙されやすいヤツやから、おちょくり甲斐があるわ」

 俺の背中をバンバンと叩きながら雄一郎が豪快に笑った。だが俺は雄一郎の言っている事が冗談ではない気がした。

 雄一郎には悪い癖がある。人の顔色を見て自分の意見をコロコロと変えるのだ。相手の反応によってその後の展開を先読みし、トラブルにならないように話を逸らす。

 仕事でもプライベートでも、その能力を存分に発揮しているのだろう。コイツが営業成績トップをキープする理由もそこにあるのだ。

「お前がなかなか呼びにこんかった罰や。ホンマに気にすんなって、ほら飲め飲め!」

 空になったグラスにビールを注ぎながら雄一郎が言った。ニコニコとして自分の本当の感情を表に出さない。コイツの本心を探るのは本当に難しいなと思いつつも、俺は雄一郎のペースに乗せられていた。

 何だか身体がフワフワとして気分が良かった。だいぶ酒も回ってきているのか、トイレに立とうとしたとき、足に力が入らず豪快に転び、床に頭を打ち付けた。目の前にはキラキラと小さな光が漂っていた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド