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ラブストーリー

渚-nagisa-(29)

   

クラス対抗リレーのアンカーを努めるタケルは、ここまでバトンを繋いでくれた仲間のために必死で先頭を狙って走り続けた。どんなアクシデントが起きようとも、タケルはそれを全て乗り越え、ゴールした。白いテープがひらりと舞う。

 今年のクラス対抗リレー 二年生の競技は、近年希に見る好勝負だった。

 

渚 第29話 五十嵐

「なぁ、お前も一生懸命やったんだから、そんなに落ち込むなよ……」

 ゴールした後、気が抜けたように呆然とするタケルの肩を叩く弘樹。元気づけてはいたが、弘樹もタケルと同じぐらい悔しかった。弘樹はタケルに気づかれないように小さく溜息を吐いていた。

 タケル達のクラスが総合優勝する可能性はもう消えてしまった。この競技で一位を獲り、現在トップである3年2組が3位以下にならなければタケル達が優勝することが出来ないのである。

 クラス対抗リレーを2位の成績で終えたタケルのクラスは、3年2組の結果を待たずして、総合優勝の可能性がなくなってしまったのだ。

 タケル以上に肩を落としていたのはハルカである。自分の走る番まではトップを独走していた(直前で転んだ義男が悪い訳で、ハルカは被害者なのだが)だけに、その落ち込み具合といったらタケルの比ではなかった。

「ハルカちゃん……そんなに自分を責めないで。悪いのはみんな榎本君なんだから」

 生徒席で、手で顔を覆いながら泣いているハルカに亜里沙は優しく声を掛けた。

「姉貴は必死に走ったじゃないか。タケルも姉貴の分を取り戻そうと懸命に走ってあんなに先頭を追い込んだんだ。まあ運悪く、バトンを落とす羽目になっちまったけど、今までの競技の中で一番盛り上がったぜ。

 一生懸命やったんなら結果がどうであれそれでいいじゃないか。でもアイツの言う通りになっちまったな。義男には気をつけろって……」

 競技前、純也とは昔から犬猿の仲であった松山茂が放った一言が、現実のものになってしまった。

 なぜ茂がその事を純也に伝えたのか、真意は今のところ分からない。特に純也と仲直りをしたわけではないのだが、茂はなぜ純也にアドバイスを送ったのか。純也はその事を気に掛けていた。

 直接、茂に聞けばよいことだが、純也にはそれが出来なかった。昔から仲が悪かった茂に対して、ケンカのとき以外に言葉を交わすということがこれまでなかったのだ。ケンカしていた頃と違い、今はどうやって茂に言葉を掛けたら良いのが分からなかったのである。

 タケル達が落ち込んでいる間にも、競技は着々と進んでいった。今大会の競技の中でとりを務める、3年生によるクラス対抗リレーである。

 

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