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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区〜三章 光か影か(7)

   

SSAクラスでの訓練開始から一か月、清水は、徹底した体力トレーニングにより、以前よりも二回りは大きな肉体と、強力な身体能力を手に入れていた。また、清水たちは、サラたち既存のSSAクラスのメンバーともすっかり打ち解けていたが、そのために、サラたちSSAクラスのメンバーの、最強のクラスに属しているとは思えないセンスの無さ、鈍さにも気付くことになった。

練習を済ませ、ぼんやりとサラたちの特徴について考えていた清水のもとに現れたのは、いつになく厳しい表情をした笹田だった。 

 

「はい、ダッシュ、ダッシュ! 気持ちを切らさないで、もっと早く!」
(くそっ、簡単に言ってくれるぜっ! 本当によっ!)
 笹田の良く通る声を聞きながら、清水は、悲鳴を上げそうになりながら、悪態をついた。
 清水たちが四十分前から乗っているのは、クライミングマシーンと呼ばれるもので、傾斜を歩いているのと同じ負荷をかけることができる器具で、割と一般的な部類のものだが、馬も通れないほどに切り立った山道を想定し、なおかつ、高度四千メートルの地点にいるのと同程度の酸素しか吸い込めないとなれば、普通のジムでのトレーニングとは、明らかに別世界の辛さである。
 しかも、両手首と足首には、五キロの重さを持つバンドを巻かれてしまっており、ほとんど全力疾走を強いられているとあれば、プロですらこなせる者はほとんどいないだろう。
 薬物投与で疲労が抜かれていなければ、とっくに清水は倒れてしまっているはずだ。
「ラスト三十! 踏んで! 気合いで踏んで!」
(うがああああ!)
 マスクによって、声が外に漏れないのが幸いだと、負荷に悶えながら、清水はぼんやりと思った。両隣の香西や高倉も、声こそ聞こえないが、全身で辛さを表現しつつ、汗を床に垂れ流しながらペダルを漕いでいる。
 指示に従わずサボったりすると、即座に器具の「自動負荷」の餌食となるからだ。これがまた、辛い。筋肉に力を込めていない分だけ時間が延長され、結局長い時間責めを味わうことになってしまうきつさは、半端なものではなく、しかも自由時間まで削られてしまうとあっては、どんな怠け者でも、真面目に訓練に励むしかないということになる。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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