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SF・ファンタジー・ホラー

風車のまちのユートピア<6>

   

ごくふつうにきみと出逢っていたら、ぼくはきみに恋していたと思う――

人は一度死んだら二度と再起動できないの――

ぼく、ひとりぽっちはいやだよ――

風の吹くまちに、いつもと違う朝がくる。
また一つ、事実が明らかになる。

 

「どうにかしてよ、アルカディア!」

 いつになく興奮気味な声が、ギーナとルーヘンの寝室に響き渡った。

「ギーナの異常、直してよ! きみが父さんの娘なら直せるだろう!? ねえ、お願い! お願いだから! このとおりだから!」

 ルーヘンは深々と頭を下げる。わずかに眉をひそめ、無言でギーナのベッドの脇に立つアルカディアに。

「お願いだよ、アルカディア……!」
「むりを言わないで、ルーヘン。わたしにはどうもできないの。人並みよりは少しばかり賢くたって、所詮わたしは凡人の域を出ない。そのわたしに、天才だった博士と同じレベルを求められても困るわ」
「でも、このままじゃギーナは直らないよ!? どんどん悪くなるばかりだよ!? いったん動力を停止してプログラムを組み直すのでもいいから、直してよ! お願いだからっ……」

 再び答えようとしたアルカディアの手を、ギーナが握った。
 枕に頭を預けたままで、ギーナは言った。

「やめて、ルーヘン。アルカディアを困らせちゃダメだ。アルカディアはせいいっぱいのことをしてくれてるよ。ぼくの異常が進行してるのは、アルカディアのせいじゃないんだ」
「そうだけど――」
「ぼくにはルーヘンもアルカディアも大事な存在だよ。お願いだから仲よくしてよ。二人とも笑っててよ」

 ギーナに言われて、ルーヘンはうつむく。

「分かったよ……。ごめん、アルカディア。ごめん、ギーナ……」
「いいのよ、ルーヘン。わたしも、ルーヘンもギーナも好きよ。力不足が悔しいわ……」

 ルーヘンはとぼとぼとアルカディアに歩み寄る。
 そして、まるで子どもが母親に甘えるような雰囲気の仕草で、彼女を抱きしめた。

「ごめんね、アルカディア」

 

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