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ラブストーリー

渚-nagisa-(30)

   

「馬鹿かお前。このまま姉貴を乗っけて病院まで行くんじゃないか。ホントはここからタクシーを呼ぶつもりだったけど、その手間が省けてよかったよ。実際。
 さあ、病院まではまだまだ時間がかかるから、さっきの話の続き聞かせてもらおうか?」

 純也はそう言うとニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。

 ハルカは足を怪我しているので、道路わきに立ててある『とまれ』の標識の棒を手で持ちながらそこに立っていた。

 純也はハルカを車の中へ迎え入れるために、一旦タクシーを降り、ハルカに肩を貸しながら後部座席へといざなった。

 ハルカはタケルと目が合うと、『おはよう』と呟き、そしてニコッと笑った。タケルはその笑顔に少しドキッとして、『あ、あ、お、おはよう』とぎこちない言葉で挨拶をした。

 純也が助手席に座り、後部座席には、左からハルカ、そしてその隣にタケル、そして右端に弘樹が座る格好になった。

「市立総合病院までお願いします」

 後部座席からハルカが運転手に行き先を告げた。運転手は『はい』と短く返事をし、車を再び走らせ始めた。

 先程の道を少し戻り、海岸沿いの国道まで出る間、4人は何も言葉を交わさなかった。

 話の続きを聞きたがっていた純也も、ここに来て少し躊躇っているようだ。実の姉の前で何かやばいことでも言われたらどうしようかと考えているのだろうか。先程までの好奇心とは裏腹に、タケルと弘樹に何かを聞きだそうというような仕草は見せなかった。

 微妙な空気が車内に漂っていた。そんな雰囲気を逸脱するように口火を切ったのは、ハルカだった。そしてその言葉は誰もが思ってもみない一言だった。

「ねえ、純也。アンタ保健室の山口と付き合ってるってホントなの? この間、亜里沙ちゃんから聞いたんだけど」

 ハルカの純也に対するストレートな質問に、タケルと弘樹は驚きのあまり、思わず目を大きく見開いたまま、何も言えないでいたのだった。

 純也はハルカの問いかけに対し、そんな馬鹿な話があるかと鼻で笑った。

「でも、この間、隣町にある映画館の前でアンタと山口を見たって亜里沙ちゃんが言ってたわよ」

 

-ラブストーリー


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