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ラブストーリー

渚-nagisa-(30)

   

 ハルカは少しガッカリしたような口調で呟いた。そして何気に外の景色を眺め始めていた。

 パシン!

 タケルの隣にいた弘樹がスニーカーを脱ぎ、それでタケルの頭を後ろから叩いた。そして後ろを振り返ろうとするタケルの口を手で塞ぎ、タケルが文句を言うのを防ぎながらタケルに耳打ちした。

「何でそこで、水森の為だからとかそういう事言えないかな。それ程経験のない俺でさえ、ここはそういう事を言わなきゃいけないって事気づいたぞ! お前はホントに鈍感だな。普段、水森と山本が苦労する様が目に浮かぶよ」

 弘樹にそう言われたタケルは気分が落ち込んでいた。弘樹に言われるまでもなく、自分でも何て気が利かない男なのだろうといつも思っていた。

 そのことは自分でも分かっていたことなので、他の人に言われると余計に堪えてしまったのだ。助手席にいる純也は『何やってるんだよ』という表情で弘樹の方を睨んでいた。

 弘樹もそこまで言うことはなかったなと、反省した様子でタケルをじっと見つめていた。

 誰も話すことはなく、沈黙の状態が続いた時、運転手が思わぬ一言を発した。

「私も渚高校の出身なんですよ」

 空気が重い中での救いの一言だった。弘樹は話を広げていこうとその言葉に乗った。

「へえ、おじさん、俺たちと同じ学校の出身だったんだ。昔と比べると今は結構変わったでしょう?」

「ああ、変わったねえ。生徒数も今とは比べものにならないくらい多かったよ。そうそう、今の校長はワシと同級生なんだ。アイツは昔から勉強はできたんだが、回りくどいところがあってねえ、すぐに済む話を延々と語るのは昔から変わってないんじゃないかな」

「あ、それ、すごく分かります。校長先生の話ってすごく長くて、全校朝礼がある時なんかは、必ず2~3人は貧血で倒れる生徒がいますよ。そうなんだ、昔からなんですね、あの長話は」

 タケルは納得してウンウンと頷きながらそう語った。

「昨日の体育祭は盛り上がったのかい?」

 

-ラブストーリー


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