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ラブストーリー

渚-nagisa-(31)

   

ハルカの付き添いで市立病院へと向かったタケルと弘樹、そして純也は、タクシーの運転手が学校医の山口の父親であることを知る。山口との交際が噂される純也は、突然の父親の登場で焦りの色を見せ始めていたのだが……。

渚-nagisa-も残すところあと10話です。
渚高校に通うタケル達の友情と恋の行方は?

これからクライマックスに向けてとんでもない事件が巻き起ころうとしています。

ラスト10話をお見逃しなく!!

 

渚 第31話 外科待合

「お、お、お父さん!」

 純也がタクシーの運転手に向かって思わず叫んでしまった。

『君にお父さん呼ばわりされる筋合いはない!』

 先程の言葉を思わず口にしてしまった純也はきっとそういう言い方をされるに違いないと思っていた。だが、純也の予想は大きく外れる結果となった。

「君が木下純也君だね。噂は予々(かねがね)娘から聞いているよ。昔は大したピッチャーだったそうじゃないか。そのまま行けば甲子園出場は確実と噂されていたそうだね。
 ワシも若い頃は野球をやっていてね。当時は1年生の時からエースで頑張っていたんだが、不幸にも肩を壊してしまってね、それでボールが投げられなくなってしまったんだよ。どういう理由があるかは知らないが、君はすでに野球を辞めてしまったそうだね。
 まあ、青春時代というのはホントに短い時間だから、あまり考えすぎずに。悩んで考えて、考え抜いた時にはすでにその時代を通り越してしまったという事のないように、後悔しないように気をつけなさい。おっと、少し出過ぎた事を言ってしまったかな。さあ、もうすぐ市立病院だよ」

 山口(父)のその言葉を聴いて、純也は少しドキッとした表情を浮かべていた。隣にいるおじさんが保健室の山口先生の父であることも理由のひとつだったが、それに加えて、純也が今一番悩んでいた事をズバリと指摘したことに驚かされたのである。

「さあ、付いた。市立病院前だよ。娘の学校の生徒達からお金を取るのは気が引けるが、一応仕事だからね。申し訳ない。さっきの料金とあわせて3500円ね」

 純也は財布から自分のお金(親の財布からくすねた2万5000円)のなかから5000円札を取り出し、山口(父)に渡した。山口(父)はおつりの1500円を純也に手渡したあと、右手を差し出し純也に握手を求めた。純也もそれに応え、右手を差し出しガッチリと握手を交わした。

「何があったのかは分からないけど、前に向かって進みなさい。高校生という時間はとても短いもの。悩んで時間を使うよりも、行動して時間を使った方が、きっと良い結果が生まれると思うよ。それじゃあ頑張って」

 山口(父)はそう言うとニッコリ微笑んで純也を見つめた。純也もそれに応えてニコッと笑った。愛想笑いではなく、何かを悟り、スッキリしたような微笑だった。 

 

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