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ラブストーリー

渚-nagisa-(33)

   

朝からの『五十嵐自殺未遂事件』のざわめきがようやく落ち着き始めた3時間目。タケル達はグラウンドで準備運動を進めていた。

遅刻して校門をくぐる生徒がみんなの目に飛び込む。遅れて来たのは、クラスメートである榎本義男だった。だが、その義男の隣には、いつもと何ら変わらぬ五十嵐の姿があったのだが……。

 

渚 第33話 登校

 朝から降っていた雨が2時限目の授業の最中に止んだ。

『どうしても今日の体育はサッカーをする。どろどろの中でやるサッカーも楽しい!』という、体育教師の守山は一人で盛り上がっていた。3時限目の体育の授業が始まり、生徒達が準備運動のためにグラウンドを嫌々走っていた時、誰もが思ってもみなかった出来事が起こった。

 自殺を図ったと思われていた五十嵐が、義男と共に普段と変わらない様子で校門をくぐり、校舎の方へスタスタと歩いてくるではないか。

 生徒達は皆、体育の授業をほったらかし、渦中の人物である五十嵐に事の真相を尋ねるべく周りを取り囲んでいた。その様子はさながら、男女の仲を取り沙汰される芸能人が、突撃レポートを受けている時のそれと同じような雰囲気だった。

「五十嵐さん、自殺を図って飛び降りたって本当なんですか?」

「いくら体育祭でミスを犯したからといって、自殺を図るなんて……」

「以前告白して振られてしまった山本亜里沙の気を引くための自作自演だという噂もありますけど、本当のところはどうなんですか?」

「最近野球部の練習をサボって、榎本義男と一緒に町に繰り出し、違う高校の女の子に声を掛けているというのは本当ですか?」

「駅前の本屋でエロ本を買おうとして、それだけを買うのが恥ずかしくて必要のない参考書と重ねてレジにお金を払いに行ったのは事実ですか?」

「毎日学校に来る途中の自販機のおつり返却口に手を突っ込んで、おつりが残っていないかを調べながら登校するっていうのは本当なんですか?」

 生徒達は五十嵐にたてられている様々な噂の真相を直撃した。

「お前ら、どこからそんな噂を仕入れて来るんだよ! お前達が言っている事は全部、事実無根だ!」

 先程まで、ご機嫌な様子で(と、いうのは、遅れて学校へ入ってくると生徒達の注目を浴びる事が出来るため、どこか自分が特別な存在だという気分に浸れるから。あくまでも五十嵐の錯覚であるが……)校門をくぐりぬけた五十嵐だったが、あまりに突拍子もない事を言われた事に腹を立てたのか、顔を真っ赤にして怒りながら叫んでいた。(腹を立てるということは、噂があながち嘘ではないのかもしれない。特に駅前の本屋へエロ本を買いに行った噂は……)

 

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