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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区〜三章 光か影か(9)

   

清水たちがバトルシティのSSAクラスで、猛特訓に励んでいる間に、彼らの故郷である第五覆面特区は、アランたちの手によって、すっかり「健全」に統制され、様変わりしてしまっていた。

一方、征服者の一人である新月の心中は穏やかではなかった。自分たちが土足で踏み込み、武力で制圧した相手に対して、自らの勢力の新たな「ミッション」の提案をすることは、彼に多大な心理的負担となっていた。しかも、アランは、そんな新月に追い打ちをかけるように、短期間で異様な変化をしつつある佳代の様子を映像で見せつけるのである。

衝撃を受ける新月。しかし、驚きに浸っている間もなく、部下がさらなる大事件の発生を知らせてくるのだった。

 

「くそっ、よそ者が好き放題しやがってよ」
 四十代位に見える中年の男が、真新しい白く塗られた巨大な建築物に向かって言葉を投げかける。すると、隣を歩いていたもう一人の男が、慌てて中年の肩を叩き、目配せをする。
 中年は、怒りで唇を震わせながら、うつむいた。巡回警備中の警備兵に睨まれたら、後々厄介なことになるかも知れない。そう、既にここは、三か月前とは、まるで違う場所になりつつあるのだ。

 第五覆面特区、中央広場。島内随一の広い空地を適当に整備しただけの土地だが、島での主だった祭りやイベント、特別な格闘興業の大部分は、ここで行うことになっている。
 怪しげな出店や露店が常駐するこの空間は、島民にとって、かけがえのない場所だった。
 たとえ住む所が無くなっても、ここでたむろしていれば、何らかの仕事にはあり付けるし、格闘技の団体から趣味のサークル、悪事の共犯者に至るまで、実に様々な仲間と出会うこともできる。
 「非公式」のネット網をフル回転させたところで、到底中央広場の便利さにはかなわない。
 しかし、そんな中央広場の姿は、既に過去のものとなっていた。 広場の中央にあった、島内最強決定戦にも使われる屋外リングは既に撤去され、代わりに、真っ白く塗られた豪奢な施設が存在感を放っている。出店や露店が入っていたスペースに軒を構えるのは、雑貨から格闘用品までまんべんなく取り揃えられた、「本土」からのチェーン店である。
 最新式の広告が、色鮮やかに様々な映像を映し出し、客の興味を惹こうとはしているが、広告映像から接客マニュアルまで画一化された効率性は、どれほど騒ぎ立てようと、根底にある寒々しいものを表現してしまうのか、あまり人は入っていない。
 商店街を鋭い目で警備しているのは、ほとんど無限とも思えるような制服や紋章のバリエーションを有する、アバウトな特区警備部隊ではなく、強力で、ワイロの類は全く効かない、「外人部隊」たちである。
 もはや、警備員に本業以外の「バイト」を依頼するような者は、ただの一人も見られない。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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