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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(13)

   

マユと二人、居酒屋で雄一郎が来るのを待っていた。なかなか姿を現さない雄一郎に苛立ちを感じた創は、テーブルに雄一郎の分の用意がされていない事に気がつく。創がそのことに気づいたとき、マユは悪戯な笑みを浮かべながら、雄一郎が今夜やって来ないことを創に伝えた。

今回は『創視点』で物語が進んでいきます。三人で食事をするはずが、雄一郎がやって来ないことをマユに告げられる創。どうして来ないのかをマユに尋ねる創だったが……。

 

 俺の胸に頭を寄せる黒田マユ。ふと視線を上に向けた彼女と目が合う。上目遣いで見られると、いつもより瞳が大きく見えた。

 真っ白で純粋な彼女の瞳が潤み、少し落ち着いた暖色系の照明のせいで、キラキラと輝いて見えた。ニッコリと笑い、唇を少し尖らせ、口付けを求める。自然と口が開き、彼女に顔を近づけるところだったが、周りの客の視線に気づき、我に返った。

 身体をずらし彼女と距離を置く。グラスに注がれた水を一気に飲み干し、俺は彼女に尋ねた。

「渡利が来ないって、どういうこと? アイツがこの席を設けたんじゃなかったの?」

「……そうですよ……渡利さんが今日のセッティングをしてくれたんです」

 雰囲気を壊され、少しご機嫌斜めになったのか、すねた顔をしながら彼女が言った。

「じゃあどうしてその本人が来ないの?」

「渡利さんは最初から数に含まれてません。今日は創さんと私の二人きりなんです。最初から」

 彼女に突然下の名前を呼ばれ、ドキッとした。

「どうして……黒田さんと二人……」

「二人っきりの時は『マユ』って呼んでください」

「えっ、でも、俺と君はそんなに親しい間柄じゃあないし……」

「いいんです。これから親しくなるんだから」

「えっ、ちょっと待ってよ。俺は君と親しい間柄には……」

「奥さんと上手くいっていないんでしょう? 渡利さんから聞きました。毎日毎日我慢ばかりして、家に帰っても楽しくないんですよね? 私ならきっと創さんを幸せにできます。だから、奥さんと別れてください!!」

 自分の気持ちを伝えたかったのか、彼女の声が大きくなる。周りにいた客がこちらをジロジロと見ていた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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