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ラブストーリー

渚-nagisa-(36)

   

ハルカが落とした薬を、落とし穴近くへと探しに行ったタケルが土砂崩れに巻き込まれた。生き埋めになったタケルを助けるべく、結束を見せる仲間達。それぞれの役割を決め、タケルの命を救おうとするのだが……。

 

渚 第36話 事故

「タケルが土砂の中にって……生埋めになったって事か?」

 弘樹が蒼い顔をしている香織を揺さぶりながら声を上げた。

「詳しくは分からないけど、突然帰ってきた亜里沙ちゃんが、泣きじゃくりながらタケルが土砂の中に埋まってしまったって叫んでたの。とにかく、早くタケルを助けに行かなくちゃ……」

 いつもなら何が起きても平然としている香織が取り乱している。弘樹と純也、そして風呂場を掃除していた義男と五十嵐も、事の重大さをしっかりと受け止め、皆が集まっている大広間へと駆けて行った。

 大広間では大きな声を上げて泣き叫ぶ亜里沙を何とか落ち着かせようと、山口先生と優が亜里沙を両側から抱き寄せるようにしてなだめていた。

「タケルは……タケルは今どんな状態なんだ!」

 駆けつけた弘樹が亜里沙に叫ぶようにして尋ねた。亜里沙は声にならないような震えた声で事件が起きた時の状況を語り始めた。

「あのね……ハルカちゃんの落とした薬はね……すぐに見つける事が出来たの……。やっぱりね……ハルカちゃんが落とし穴に落ちた拍子にね、穴の中にね……落ちていたみたいなの……」

 亜里沙は一言話す度にしゃくり泣きをしながら、ゆっくりと話していた。

「そしたらね……すぐ横の斜面が急に崩れてきて……タケル君が穴に入ったまま……」

 そう言うと、亜里沙はワーッと子供のように咽(むせ)び返りながら泣き始めた。

「早くタケルを助けに行かないとまずいぞ! 山本がここまで戻ってくるまでに少なくとも15分以上はかかってるだろう。早く掘り起こさないとタケルの命が……」

 他の者が動揺する中、純也だけは冷静な判断をしていた。とにかく早くタケルを助けにいかなければ行けない。それが今やらなければならない最も重要な事だと誰もが分かっていたが、いざ行動に移すとなると、一体何をすればよいのやら戸惑うばかりだった。

「よし、とにかく現場に向かおう。山本! 案内できるか?」

 亜里沙は言葉こそ発しなかったが、力強い眼差しで大きく頷いた。

 

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