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ラブストーリー

渚-nagisa-(37)

   

仲間達の必死の捜索により、一命を取り留めたタケル。だが、タケルの意識はいぜん、戻らないままだった。
タケルの事を心配し、毎日タケルの顔を見にやってくる仲間達。その甲斐もむなしく、タケルの容態はいっこうに回復しないままだったのだが……。

 

第37話 希望

 医者が駆けつけるまで、ハルカは何度もタケルの名前を呼んだ。だがタケルの返事はなかった。しかしかすかに指先が動いたのをハルカは見逃さなかった。

 医者が駆けつけタケルの容態を確認する。何度かタケルの名前を呼びかけると、先程と同じようにかすかに指先だけが反応している。医者は傍にいたタケルの母親の顔をじっと見つめると、小さく頷いた。

「まだ完全にとは言い切れませんが、息子さんは私の呼びかけに対して応えようとしてくれました。まだ安心してくださいとは言い切れませんが、息子さんは一歩ずつ、回復に向かっているようです。これも毎日息子さんの顔を見に来てくださるお友達のお陰ですな」
 医者はそう言うと、来た時の強張った表情とは違い、柔和な顔で病室をあとにした。

 病室の中はみんなの笑顔で溢れていた。まだ意識を取り戻したわけではないが、タケルが少しだけでも回復に向けて前進している事を知って、その場にいた皆は心の底から湧き上がる思いを隠しきれないでいた。
 
 夕方近くになり、試合を終えた五十嵐が義男を引き連れタケルの見舞いへと訪れた。タケルの容態が少し回復したという事を弘樹の口から知らされると、五十嵐と義男は抱き合いながらタケルの回復を喜び合っていた。
 五十嵐と義男は用事があるからと、先に病室をあとにした。残った仲間達は再びタケルの回復を祈り、千羽鶴を折り続けていた。

 面会の時間が終わりに近づき、後片付けをし、タケルに『また来るよ』と其々が声をかけたあと、病室をあとにした。

 4人で病院を出て家へと向かっていた時、亜里沙が急に何かを思い出したのか、突然立ち止まった。

「私、お父さんにお遣いを頼まれていたのすっかり忘れてた。親戚のおばさんの家にこれを届けなきゃいけないんだったわ」

 亜里沙はそう言いながらカバンから白い封筒を取り出した。

「ごめんなさい。みんな先に帰ってて。おばさんの家、ここからそれ程遠くないところにあるから今から行ってくるわ」

 亜里沙はそう言うと、みんなに手を振ったあと、みんなとは逆方向へと向かい駆け出していった。

 

-ラブストーリー


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