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ラブストーリー

渚-nagisa-(40)

   

決勝戦。九回の表ランナーは一塁。この回を無得点に抑え、九回の裏に同点に追いつかなければ、渚高校野球部の夏はここで終わってしまう。最後の望みをかけ、純也は怪我の痛みに耐えながら、必死にこの回を抑えようとするのだが……。

 

渚 第40話 手紙

 九回の表、ツーアウトランナー一塁の場面である。この回を無得点に抑え、九回の裏に逆転をするか、もしくは同点に追いつかなければその時点で渚高校野球部の甲子園出場の夢は消える。どうしても次のバッターを打ち取ってもらいたいという期待が高まる。

 観客席から流れるブラスバンド部による応援の演奏。選手達の士気を上げるため、演奏にも熱が入る。

 純也の登場はブラスバンド部には当然知らされておらず、純也の投球を盛り上げる曲は用意されてはいなかった。急遽、純也のために演奏された『ルパン三世のオープニングテーマ』が球場に流れると、純也のテンションも上がり始めた。

 あと一人、あと一人を抑えればきっと何とかなる。純也は気合を入れなおし、セットポジションに入った。

 山下の要求は、フォークボールだ。義男が懸命(?)に集めてきたデータからも、このバッターはフォークボールをよく空振りするという事が純也の頭の中にもインプットされていた。弘樹はボールを人差し指と中指の間にしっかりと挟みこみ、大きく振りかぶった。
 純也の豪腕が勢いよく振り下ろされる。ボールは勢いよく純也の指から離れ、そしてバッターの手前で急激に変化した。義男のデータ通り、バッターは思わずバットを振り出す。

 スットライーーーーーク!!

 主審は大きく腕を上げ、コールした。

 二球目は外にはずし、ワンストライクワンボール。三球目はカーブが決まり、ツーストライクワンボールとバッターを追い込んだ。

 純也は最後の決め球はフォークボールと決めていた。義男が折角(?)手に入れたデータを信じようと決めていたのである。

 純也の投げたフォークボールはバッターの手前で急激に変化した。先程と同じコースに入ったフォークボールに何とかバットを合わせる。ボールは転々と純也の目の前に転がる。完全に打ち取ったのだ。純也はグラブを使わず、素手で捕球すると、そのまま一塁へ投げた。ランナーが一塁へと到着する一メートル手前で、ボールがファーストミットへ吸い込まれる。ランナーを残したまま、九回の表の攻撃が終了した。

 渚高校ナインにとっては最後の攻撃である。この回に最低でも同点に追いつかなければならない。ナイン達はベンチの前で円陣を組んだ。

 

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