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ラブストーリー

追っかけ希望!<前編>

   

夏の終わり・・・

亜美は、海で坊主と出会った!?

失恋して、哀愁に耽ってみようかと訪れた海で、あるはずのない姿に気を取られ、哀愁などどこへやら。
だが、その日から彼の事が忘れられず、亜美は彼の事を探す事を決意した!

 

 夏が終わろうとしていた。
 北の海は、もう人も疎らで風も冷たく、上着無しではいられないほどだ。
 そんな海で、アタシ、梶原亜美は・・・

 坊主に出会った・・・・・・チーン。

 何故ここに坊主がいるのか、ナゾだ。
 しかもご丁寧にキチンと正装して、砂浜に座り込み手を合わせて経を呟いている。
 あまりにこの場所に不似合いなこの坊主は、長めの黒髪をなびかせ、真っ直ぐに海の方を見詰め、ただ経を読んでいた。

 もう陽も、水平線に沈み始めたこの時間、疎らな人たちはさして気にしている様子ではない。みんなそれぞれに楽しんでいる姿が目に映る。
 そんな様子から、坊主が今さっきこの場所へ来たわけではなさそうだ。おそらくは、しばらくの間、ここへと座っているのだろう。

「・・・というか、アタシは何してるんだ」

 思わず呟いた言葉。
 そうだ。
 こんな時間に一人、海へと来たわけは単純である。
 失恋したから哀愁に耽ってみようかという、自分でもよく分からない行動。だが、その哀愁はどこへやら。
 海岸に辿り着いて、さて、と、眉を下げた時、坊主に気付いた。
 居るはずの無い姿に気を取られ、すっかり哀愁など消えてしまった。

 気がつけば、ずっとその坊主を見詰めていたわけだが、陽が半分も沈んだ頃、ようやく坊主の経が止んだ。
 合わせていた手が静かに下りて、立ち上がった坊主。法衣の砂を払い、海に背を向けたその時、アタシは固まった。
 背後から見ていたから、顔など分かるハズも無いが、振り向いた顔は、間違いなくイイ男だった・・・。

「あり得ない・・・」

 ジジイだと勝手に思っていたアタシは、その端整な顔にただ放心した。
 アタシの横を静かに横切って行った坊主は、海岸に入る手前に停められていた車の方へ向かって行く。その姿を目で追っていると、一台の車に乗り込み・・・

・・・ではなく、車に並んで停めてあった『ママチャリ』に跨り、颯爽と姿を消した。

「いや・・・、それはナシでしょ・・・」

 棒読みで呟いたアタシの口元は、気が付けば引き攣っていた・・・・・・チーン。

 

-ラブストーリー

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