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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(14)

   

雄一郎が会社を休み、長瀬課長が途中で会社からいなくなった。
創は雄一郎が休んだとばっちりを食らい、以前入れたシステムの点検と、営業部のお使いを頼まれ、出先へ向かった。

 帰り道、ふと寄った繁華街。その近くにある歓楽街から現れる男女の姿を見て、創は胸が苦しくなった。

 ホテルから出てきた男女とは……

 

秘密(14)

「誠……お前、何やってるんだ? マユちゃんまでいったい……それにお前ら、今は就業時間じゃ……」

 ラブホテルから出てきた二人に不信感を抱く。まさかこの二人がそういう関係だったなんて……。 
 二人にかける言葉が見つからない。マユは俺に好意を寄せているフリをしていたのか? 本命は誠だったのか?

 頭が混乱する。マユという人間が分からない。戸惑う俺に、マユが慌てた口調で話しかけてきた。

「創さん、違うんです!」

 マユが俺の右手を両手で強く握り締め、潤んだ瞳で俺の目をじっと見つめながら言った。

「違うって言われても、実際にホテルから出てきたわけだし……」

「そ、それはそうですけど……でも違うんです! 市ノ瀬さん、あなたからも事情を説明してください」

 マユは泣きそうな顔をしながら誠に助けを求めた。誠はマユの肩にそっと手を置き、彼女をなだめてから俺に話しかけてきた。

「創……僕の言うことを信じてくれるかい?」

 誠はまず最初に『今から言うことは本当の事だよ』という前置きめいた言葉を言い放った。

「信じたいさ。誠は雄一郎と違って嘘をつく男じゃない事は分かっている。でも状況が状況だけに……」

「そうだね。無理もないよね。でも僕の言うことを黙って最後まで聞いてくれるかい? そうしたらきっと納得してくれると思うから」

 誠はじっと俺の目を見ながら言った。メガネの奥に見える純粋な白い瞳。決して嘘をつけるような奴ではないと、その真剣な眼差しを見てそう思った。誠の問い掛けに、俺は小さく頷いた。誠はここに至るまでの経緯を語り始めた。

「まず、僕と黒田さんの関係だけど、創が思っているような関係ではないよ。僕は彼女をこのホテルまで迎えに来たんだ。仕事の方は昼から有休を取ってね」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド