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ラブストーリー

追っかけ希望!<後編>

   

彼の冷たい目にすっかり落ち込んでしまった亜美。
何が怒らせてしまったのか分からなかったが、とにかく謝りに行こうと決意した。
そして、友閑寺に向かった亜美は、彼が海で何をしていたのかを知る事になった・・・。

 

 翌日、仕事には行った。行ったけれど、何をしてきたのか覚えちゃいない。
 当然、怒られてたのは覚えてるが、何で怒られたのかも不明だ。
 部屋で一人、膝を抱えて思う事は、あの時のテンションを何故抑え切れなかったのか。覚えてくれていたという事実が、嬉しすぎてたまらなかったのだ。
 それ故に、ペラペラと喋ってしまっていた自分が恥ずかしい・・・。

「謝った方がいいんだろうか・・・」

 とはいえ、何を謝るべきなのかも分かっていない。何が彼を不機嫌にさせたのか全く分からないのだ。でも、謝らなければいけない気がする。
 そう、このままで終わりたくなかった。
 もう会えないにしても、このままじゃ後味が悪すぎる。というより、自分がここまでの気持ちになれるとも思ってなかった。
 新しい自分の発見。

「・・・とにかく、謝りに行こう」

 重たい身体を立ち上がらせて、アタシは“友閑寺”に向かった。
 もう真っ暗な道路を歩きながら、あの十字路を曲がり、寺の門に辿り着く。そして、両手で頬を叩いてから、唇を結んで門を潜った。
 暗闇にひっそりと佇む本堂を少しの間見詰めてから、隣接している住居らしき建物に近づいた。明かりが漏れているから、おそらくはこの中に居るのだろう。
 引き戸になっている玄関の前に立ち、アタシは急に緊張して、膝が笑い出した。呼び鈴に指を向かわせ、深呼吸を何度も繰り返してから、固唾を呑んだ。

「どちらさん?」
「うわぁっ!?」

 いきなり肩を叩かれて、驚きに飛び退いたアタシ。振り向いて、誰だか確認した時、更に1メートルは逃げた。
 肩を叩いたのは、彼だった・・・。

「何してんだ、こんな時間に」

 急に変わった彼の顔。昨日の冷たい目で、アタシを見下ろす。その目に直ぐに耐え切れなくなって、アタシは何も言わずに寺から逃げた。逃げてから、めちゃくちゃ後悔した。

「何しに行ったんだよ、アタシっ・・・」

 上がりきった息で、空を仰いでから項垂れた。
 これじゃ、なんの解決にもなっちゃいない。謝るという事も実行に移せず、情けなさにしゃがみこんだ。

 あの冷たい目は、苦手だ。
 何も言えなくなる。
 というより、あの目で見られると・・・正直辛いを通り越して、悲しい。
 彼はもう、アタシをあの目でしか見ないんだ。

「なんで・・・何でこうなったの・・・」

 スーパーでの出来事が夢のようだ。現実に起きた感が全くない。
 だけど、あの時、どうして彼はアタシを助けてくれたんだろう。送ってくれたりもして・・・。

「やっぱり、謝る・・・。優しい人だもん・・・」

 あんな状態のアタシを、本当は送ろうとしてくれたのだ。アタシが何かをしでかさなければ、ちゃんと部屋まで送ってくれただろう。
 二度と会える事がなかったとしても、本当の彼をもう一度見たい。だから・・・。

 

-ラブストーリー

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