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ラブストーリー

I want to see you. 1

   

『恋の足音』続編になります。

伸吾との遠距離恋愛を続けて、半年近くになる。
そんな中、桃花の会社ではリストラが始まっていた。
その対象者になっているのかもという不安が、桃花の心を沈ませていく。
そんな時に、伸吾から「お盆の休みに会いに行く」という言葉を聞いて、喜んだのだが・・・。

 

 ジリジリとした暑さが肌に突き刺すような夏。
 夕方になったとて、それはほんの少し和らぐだけだった。
 その暑さに苛立つのは毎年の事だが、桃花はその暑さとは別にかなり苛立っていた。
 不景気の波を被って、桃花の会社でもリストラが始まっている。新年度を迎えてから、じわりじわりとその噂は広まり、一人、また一人と顔を見せなくなっていく社員が増えた。
 その社員は、女性社員が大半を占める。それは、結婚してしまえば、仕事を辞める事が多いからという偏見。そんな会社に勤めてしまったのが運の尽きとでも笑うしかない。
 だが、今結婚を望まない女性もいる中、そんな事でリストラされては堪らないと、女性社員の表情はいつも険しい。
 桃花もまた、いつ自分がその対象になるかと、内心ビクビクしながら働いていた。

 人が少なくなった分の残業は当たり前になっているこの頃、桃花も残業をして会社を出たのは8時を回っていた。今では、休日が待ち遠しくて堪らない。一日中眠りたいのだ。
 それくらい、一週間の疲労は激しかった。
 溜息一つ吐いて、地下鉄の改札に向かっている途中、鞄の中の携帯が着信を告げた。それを気だるそうに掴み出し、画面を開いてから、桃花の顔が少しだけ緩んだ。

「もしもし?」
=桃花?終わった?=
「今、改札入るとこ」
=そっか、お疲れ。家に戻ったらメールくれる?=
「分かった」

 短い会話を済ませて、携帯を鞄に戻した桃花は、恋人の伸吾の声にホッと息を吐いた。毎日くれる電話とメール。それが今の桃花にとっては、何よりの癒しだ。
 遠距離恋愛というものが始まって、もう半年になろうとしている。それでも、想いが通じた頃の気持ちは、未だ変わらずだった。
 
 今年から社会人になった伸吾は、丁度仕事も面白くなってきている時期のようで、毎日の電話は声が曇る事はない。仕事の話も、勢いがある。
 そんな伸吾の声を聞くと、疲労の激しい時でも、桃花は思わず笑顔になってしまう。ただ、桃花の現状は、深く話せた事はないが。
 それでいいと思っていた。
 自分の沈んだ話などしても楽しくないだろうし、それなら伸吾の元気な声を聞いていた方がいいと、桃花は地下鉄に乗り、家に向かった。

 

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