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ノンジャンル

輪っかの外側(前)

   

一見、平凡な高校生ながら、実は訓練に実際の野球以上の労力を要するという野球ゲーム「究極難度ベースボール」のプロゲーマーである矢野は、転校してきた少女、天音が、自分と同じプロ選手であることに気付く。仲間としての友情を深める矢野だったが、同時に、天音の鞄の中には、マニアックな、授業には不要な本が一杯に入っていることも知るのだった。

 

 俺の通っている高校は、早く言って、何の特徴もない、ごくありふれた学校だ。
 県立で、商業や工業みたいな専門コースもなく、偏差値も高くも低くもない。部活に力を入れているわけでもない。予算が下りずに設備が整わないこともあるが、そもそも、部活に燃えていたり、中学の頃から注目されていた連中は、近所にいくつもある私立校に進むのが常で、試合に勝つのに不可欠な戦力が整わない。
 だから勝てない。勝てないから熱が入らないという循環を辿っているわけだ。
 ただ、つまらないかと言うと案外そうでもなく、ある程度の目標を定めて勉強を頑張ったり、楽しく部活をしている生徒は少なくないし、良くも悪くも余裕のある環境だからか、いじめも少ない。友達と遊ぶのを楽しみに学校に来ているような奴も多い。
「よう、矢野。相変わらず精が出るな」
 級友の挨拶に、軽く首を動かして応じた俺は、しかし、実のところ退屈していた。自分で選んだ道とは言え、部活や勉強などとは違い、共通の話題を持つことができないのは、やはりつまらないなどと、勝手な事を考えながらも、俺の両手は、何万回と繰り返してきた動きをほとんどひとりでに反復している。
 事情を知らない一般生徒からすれば、何とも奇異な動きに見えるだろうが、規則的な基本練習を繰り返しているに過ぎない。
「なあ、聞いたか? 今日転校生が来るらしいぜ。このクラスに」

 

-ノンジャンル

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