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ラブストーリー

I want to see you. 3

   

*『恋の足音』続編

桃花の心が悲鳴を上げ始めた。
ただ、伸吾の声が聞きたい、思うことはそれだけだった。
最後の言葉だったとしても・・・。
そんな時に、英明からの突然の告白が。
だが、桃花の気持ちは・・・。

 

 他愛ない話をしながらアパートの前に着くと、英明も車を降りて、部屋の前まで桃花を送った。

「すいません、本当に有難う御座いました」

 鍵を開けながら、桃花は英明を見上げて、軽く頭を下げた。

「別に、気にしなくていいよ。とりあえず、ゆっくり休んで。でも、また倒れたら、俺が介抱してあげるから、遠慮なく電話して」

 おどけた感じに、耳の横で受話器を持つジャスチャーしながら、英明は口角を上げた。それに釣られて笑った桃花に、胸を射抜かれた感覚を覚える。無意識の内に起こしてしまいそうな行動を何とか抑え、離れがたい気持ちを堪えて、英明は軽く手を上げて踵を返した。

「じゃ、また電話するから」
「はい、分かりました」

 桃花は、ドアを開けて身体を半分中に入れてから、車に乗り込む英明を見ていた。その視線に気付いた英明は、乗り込んでから桃花に視線を送る。
 しばらく黙って見詰めていた英明は、フッと顔を緩め、ゆっくりと車を動かした。そして、クラクション一つ鳴らして会社に戻って行った。

 桃花は、車がいなくなったのを確認してから、長い溜息を吐いた。
 作った笑顔は、やはり疲れるんだなと、髪を掻き上げて居間に鞄を置く。正直、大丈夫なわけはないのだ。まだ頭が少し重たい。身体のだるさは、何もする気になれない。
 とりあえず着替えなければと、スーツを脱いで普段着に着替えると、直ぐにベッドに倒れこんだ。だが、直ぐに起き上がり、鞄を手繰り寄せて携帯を取り出す。
 もう一度ベッドに転がって画面を開いて、ボタンを押しかけて、桃花は溜息零した。
 今はまだ2時を回ったばかり。
 本当は、今すぐ伸吾の声が聞きたかった。一日聞かなかった声が、凄く恋しい。

(声・・・聞きたいよ・・・)

 発信履歴を開いた桃花は、しばらくその画面を見詰めたまま、唇を結んでいた。
 こんなにも、伸吾に発信する事に、戸惑いを感じた事がなかった。大きく打ち鳴らす鼓動。緊張したまま画面を見詰める事数分。
 結局桃花は、画面を閉じてしまった。

(出てくれないかもしれない・・・)

 携帯を手から離し、熱くなった目を腕で押さえた。

 

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