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ラブストーリー

I want to see you. 4

   

*『恋の足音』続編

ドアを開けたのは、伸吾だった。
英明は伸吾が桃花の彼氏だと分かり、敵意を剥き出しにして睨みつけた。
だが、伸吾は、中での話を外で聞いていて・・・。

 

 外からの光を遮った影は、ドアの高さと同じ位の物。
 いきなり現れた人物に、英明は桃花を庇うようにして立ち上がり、「誰だ」と尋ねた。

「・・・悪いんだけど、アンタに用はないんだ。帰ってもらえる?」

 肩を上下させ、上がっている息を整えながら答えたのは、伸吾だった。
 

 どうしても今の状態を抜け出したかった伸吾。会社からの帰り、電車の中で思った事が、身体を動かしたのだった。
 そう思った瞬間、会わなければと強く思った。『会えない』じゃなく、会おうとしなければダメなのだと、自分の甘さに気付いたのだった。
 お金を貯めてからなんて悠長な事を言って、一体どの位の金額を貯めてから会いに行こうとしてたのか。お盆までにと貯めた金額を考えると、ひと月に一度は此処へと来る事が出来る金額があった。
 それを思うと、桃花が自分から離れていっても仕方が無いと思った。
 ただ、仕方が無いで済ませられない事に改めて気付いた伸吾は、今、この時に会って、今の状態を抜け出さなければ、本当に桃花が離れてしまうと危機感を持ったのだった。

 殆ど何も考えてはいなかった。ただ、桃花に会いに行く、それだけを思って、駅からこのアパートまで走り、辿り着いた伸吾だった。だが、静かに部屋の前に来てみれば、いきなり桃花の部屋から怒鳴り声が聞こえてきた。
 しかも男の声。
 一瞬にして、怒りが込み上げた。自分以外の男が、ドアの向こうにいると思った瞬間、頭に血が昇った。
 ドアを開けて殴りこもうと思った時、桃花の言葉が聞こえて、ドアノブを掴みかけた手が止まった。

『伸吾は、そんな人じゃ・・・』

 自分の事を話している事に気付き、手を下ろして、眉を寄せて聞き耳を立てた。
 話を聞いている内に見えてきた内容。
 桃花の言葉、一つ一つに胸が痛みだす。
 勝手にイラついて、嘘まで吐いた。なのに桃花は自分を想ってくれている。
 伸吾は静かに拳を握り、自分を責めた。

 

-ラブストーリー


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