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ラブストーリー

0と1の霧

   

『私』は、その人の死を知り、ショックを受けた。
一度も会ったことはなかったが、メールとブログで、よく知っている人だった……。

※とても暗く、感情剥き出しな小説です。苦手な方はご注意ください。

 

 ある若いイラストレーターの死を報じた記事をネット上で見たとき、私は呼吸ができなくなっていた。

 そのイラストレーターとは、仕事で何度も一緒に組んだ仲だった。
 ただし、一度も会ったことはない。
 メールでずっと、やりとりをしていただけ。
 私は駆け出しのイラストレーターで、立ち上げたサイトを通じて彼と知り合い、そのまま共に仕事をする機会に恵まれた。
 頭が良くて、才気溢れ、誠実な人。
 メールの文面から容易にそれを読み取ることができる人物で、私は勝手に彼のことを師事していた。

 その彼が、死んでしまったという。
 心筋梗塞で。
 ……信じられなかった。
 私はメールファイルを開き、彼から最後に貰ったメールの日付を見てみる。
 ちょうど一週間前の日に、私は彼からメールを貰っていた。
 そうだ、と、思い出す。
 このメールを貰って、私は新たな質問を乗せて返信をしたのだった。
 だがなかなか返信がなく、すぐに返事をくれる彼にしては珍しいなと思っていた。
 でも。
 そこに『死』が絡んでいるなんてことは、微塵も考えていなかった。

 私は『お気に入り』ファイルを開き、彼のホームページに飛んでみた。
 多分、この報道は間違いなんだ。
 だからきっと、『俺の死亡説が流れちゃってさあ』なんて苦笑交じりのブログが更新されているに違いない。
 ……そんなことを考えながら。
 でも、ブログは更新されていなかった。
 代わりに最新記事のコメント欄には、彼の死を惜しむ声が大量に寄せられていて。
 私はパソコンの電源を落とし、震える手で頭をかきむしった。

 

-ラブストーリー


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