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ラブストーリー

I want to see you. 6

   

*『恋の足音』続編

英明の恐怖から逃れた桃花は、伸吾に電話を掛けて悲痛な声を上げた。
「そこに連れて行って」と泣く桃花に、伸吾は迎えに行くと約束する。そして・・・

*最終章になります。
長い間お付き合い下さいまして、有難う御座いましたvv

 

「どうした!?」

 息を切らして泣き崩れた桃花に驚いて、警察官も慌てて駆け寄り背を擦る。
 どうしたのかと何度も質問を繰り返すが、言葉を発せない状態を見かねて、奥へと連れて行き、麦茶を差し出した。

「何があったか、話してもらえるかい?」

 優しく問い掛けられた言葉に、少しずつ落ち着きを取り戻した桃花は、震える声で電話を貸して欲しいと頼んだ。
 その言葉に、電話機を引っ張って桃花の前に置くと、直ぐに受話器を取り番号を押し出した。発信先はいつも掛け慣れた番号。いつの間にか頭の中に入った番号。

「伸吾っ・・・?」
=桃花!?大丈夫か!?=
「もぅ嫌・・・伸吾迎えにきてっ・・・、そこに連れて行って・・・」

 再び号泣し出した桃花から受話器を取った警察官は、とりあえずの状況を説明して、伸吾から事情を聞いた。
 そして、英明の事を聞いて、桃花の住所を聞き出し、二人の警官がそこへと向かった。
 受話器を持ったまま離さない桃花。初めて味わう恐怖に、ただ伸吾を呼ぶだけだった。

=桃花、迎えにいく。だから、落ち着け=

 言い聞かせるようにして、ハッキリと話した伸吾の声に、桃花は小さく何度も頷いた。
 だが、時間も時間だ。伸吾は電話の向こうで、小さく唸った。

=桃花、実家は近い?=
「・・・地下鉄で行ける・・・」
=明日、朝一番で迎えに行く。だから、今日は実家に行ってて。戻るなよ、部屋に=
「・・・分かった・・・」

 頷きながら、落ち着きを取り戻した桃花は、何度か深呼吸して受話器を置いた。

「とりあえず、男とは面識ありか?」

 質問されて、桃花は頷いた。そして英明の名前と職場、それらを教えて項垂れた。
 あの出会いが、こんな事を引き起こしたのだと、唇を震わせる。救いの手を差し伸べた男は、自分へ恐怖を与える存在だった。
 抱き締められた感触が残り、背筋が寒くなる。伸吾に存分に抱かれて、その余韻を残してたはずの身体が、あの一瞬で消されてしまった。

(伸吾・・・早く来て・・・。会いたい・・・、会いたいよ・・・)

 自分の身体を抱き締めて、大粒の涙を零す桃花。それを見て、警官が再び優しく背を擦った。

 

-ラブストーリー


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