幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(19)

   

亮介との約束の日、智美は朝から落ち着かない様子で朝の準備を進めていた。普段とは違う、そわそわした感じの智美を見て、不審に思う創。果たして智美は創にバレずに亮介に出会うことができるのだろうか……。

 

秘密(19)

 約束の日の朝。あいにくの曇り空だった。娘のお弁当を作りながら、朝の情報番組から流れる天気予報に耳を傾ける。午後からは雨の予報だった。

 今日は幼稚園に延長保育をお願いしている。迎えにいくのは夕方になる。その頃にはもう雨が降っているかもしれない。娘の雨ガッパを用意していると、

「降るのは夕方からだぞ……」

 会社へ出かけようとしていた夫が急に声を掛けた。夫の言葉にドキッとする。夕方まで帰らないことに気づかれたかも知れない。

「でも、最近の天気予報はあまりあてにならないからな」

 夫のその言葉にホッとする。夫にしてみれば何気ない言葉も、今の私にとってはそのひとつひとつがいつもとは違っていた。夫が言っている事はいつもと変わらない事なのに、受け止める私の側が敏感になりすぎているのだろうか? つまらなかった私の日常は、亮介さんの出現によって大きく変わり始めようとしていた。

 夫には延長保育のことをなんと言い訳すればいいのだろう。どこかへ出掛けるからという理由はマズイ。ドコに行くのだと問われる事は目に見えている。かといって他にうまい理由が見つからない。

 こんな時、亮介さんならどうするのだろう。頭に想像上の亮介さんが浮かび、その姿にドキッとする。果たして本当の亮介さんはどんな顔をしているのだろう。そう考えるだけで胸が躍った。

「何か良いことでもあったのか?」

 夫に話しかけられビクっとした。夫がまだ出掛けていない事に全く気がついていなかった。私が頭の中で亮介さんのことを想像している間、夫はどんな思いで私の事をみていたのだろう。私は浮かれた顔をしていたのだろうか。

「うん……今日の占い、獅子座が一位だったから」

「そんなことでニヤニヤするなんて、幸せな奴だな。じゃあ、行ってくるよ」

「はい、行ってらっしゃい」

 なるべく声のトーンが明るくならないように、夫を送り出した。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


コメントを残す

おすすめ作品