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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(21)

   

亮介と初めて顔を会わせる事となった智美。
待ち合わせのカフェで亮介の顔を見たとき、智美の心には『ある思い』がこみ上げていた。

初めて会った亮介に、智美が抱いたある思いとは……。

 

秘密(21)

「海へ行かないか? 最初の遠出はおまえを後ろに乗せて海へつれていく……免許を取る前からそう決めていたんだ」

 雄治は中古のバイクにまたがり、私に優しく微笑みながらいった。朝の新聞配達、そして夕方からは運送会社での荷物の仕分けのアルバイトをしながらコツコツとお金をため、ようやく手に入れた青いバイク。

「付き合っている彼氏がバイクぐらい乗れないとカッコ悪い」

 という私の冗談を本気にした雄治は、私に内緒でバイクの免許を取っていた。

 私の通う高校では、バイクの免許を取ることは禁止されていた。だけど16歳になれば法律上はバイクの免許を取ることができ。

 学校の帰り道、彼女を後ろに乗せて颯爽と駆け抜けてゆくバイクを見ていると、彼氏には絶対にバイクに乗っていてほしいという願望はあったにはあった。だけど学校で禁止されていることもあり、雄治には冗談で言ったつもりだったのに、彼は本気にしていたのだ。

「次の水曜日でいいかな? 他の日はバイトが忙しくてなかなか時間が取れないんだ」

 高校二年の夏休みだった。休みの間、雄治はバイトを増やしていた。恐らく私をデートに誘うための軍資金をコツコツと貯めていたのだ。
 決してそんな言葉は口にはしないが、雄治はそういうひとだ。自分の事よりも相手の事を優先する、とても優しい人だった。

 恋人が運転するバイクの後に乗るという私の夢は、雄治が叶えてくれるはずだった。
 
 雄治はあの日、デートの下見に出掛けていた。

 朝は新聞配達、昼間は工場で働き、夕方からは運送会社で働いていた。若くて体力があるとはいえ、三つの仕事を掛け持ちしていた雄治はとても疲れていたのだろう。にも関わらず、私とのデートで失敗しないように、あの日の夜、雄治は下見に出掛けたのだ。

 雄治は帰る途中、バイクで転倒し、死んだ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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