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SF・ファンタジー・ホラー

窓際騎士、魔族に会う(中)

   

シェインと意気投合したウェインは、彼女が跡取りだという宿に滞在することにした。魔族自治国の街角や宿の雰囲気は、伯国での評判よりもずっと自由かつ平穏で、宿でも彼は、様々な種類の魔族に問題なく受け入れられた。

ウェインは宿で開戦延長のための「仕掛け」を打っていたが、夕食の席でうっかり、「種族専用」の酒を飲み干してひっくり返ってしまう。そして、翌日彼は、予想だにしなかった場所で目を覚ますことになるのだった。

 

「なるほどねえ。役人って言っても大変なんだ」
「私のように上役に睨まれると、針のむしろというやつですよ。どうすることもできません」
 がたり、ごとりと馬車に揺られて数時間。ウェインは、シェインとステファンに向かって、いつの間にか身の上話などをするようになっていた。
 馬車の心地よい揺れやシェインの気さくな態度、そして、馬車から見える自治国ののどかな風景が、彼の心を解きほぐしていた。
(しかし……)
 シェインと楽しく語らいながら、ウェインは、周囲の風景に驚きを覚えていた。伯国では、魔族が流れてきた人間を、そして一部の上級魔族が多くの魔族を支配するという、実に抑圧的な体制が敷かれていると伝えられてきた。
 しかし、自治国では、伯国よりもずっと平和な時間が流れているように見える。通りの角で、隙あらば徴税金をがっぽり頂こうとしている衛兵がいるわけではないし、治安担当の騎士が、工房に張り付き、監視の目を光らせているわけでもない。
 働き、言葉を交わしている者の多くが、伯国にいる人間とは違った肌の色をしていたり、体に翼や鱗が生えていたり、あるいは、自分の頭の上に乗っているステファンのような形だったりすることを除けば、至って平穏な日常が送られているように見える。
「驚きました。伯国で語られているのとは随分違っているみたいで」
 ウェインが、素直に感想を述べるとシェインは小さく笑った。

 

-SF・ファンタジー・ホラー

窓際騎士、魔族に会う<全3話> 第1話第2話第3話

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