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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(26)

   

智美の浮気に心を痛めていた創。
そんな傷心の彼を母親のような大きな心で慰めるマユ。
創は彼女の優しさに、次第に心を許し始めていた。
 
彼女の前で子供のように涙を流し始める創。それをしっかりと受け止めるマユ。 
二人きりの彼女の部屋の中、二人は……。

 

秘密(26)

「いいじゃないですか、そんなこと……それより、ちゃんと流さないと」

 マユはシャワーヘッドを俺の頭に近づけ、頭に乗っている泡を流し始めた。できるだけ彼女の姿を見ないよう、俯いたままじっと目を閉じる。彼女がシャワーを掛けながら手で頭をゴシゴシと擦る。その優しい指使いに、背中にゾクゾクとした感覚が走った。

 蛇口を閉めるキュッという音がした。と同時にシャワーの勢いが弱まり、そして止まった。マユが俺の髪を手でぎゅっと絞る。ポタポタと滴が落ちた。
 頭にタオルがふわりとかぶせられる。彼女はタオルで濡れた髪を拭いてくれた。

「ありがとう……」

 後ろを向かずに彼女に礼を言った。彼女は何も答えなかった。
 
 沈黙の時間が続く。彼女はいったいどんな気持ちでいるのだろう。とりあえずこの気まずい空気を何とかしなければ。まずは外にでよう。そう思った時だった。背中に柔らかいものが触れた瞬間、マユが後ろから腕を回し、俺に抱きついた。

「創さん……奥さんのこと、愛してますか?」

 マユが耳元で囁いた。俺は答えることができなかった。

「奥さんもきっと、亮介さんとこんなことをしてるんでしょうね。創さんが一生懸命家族のために働いている時間に……」

 マユにそう言われ、胸が締め付けられた。確かにマユの言うとおりだ。俺が家族のために必死に働いている時間に智美は……。

 智美と亮介の関係を思い出し、胸が苦しくなる。と、同時にある疑問が浮かんだ。

「黒田さん……どうして智美のことを?」

 彼女には智美と亮介のことは話していない。

「誰からそのことを聞いたんだい?」

 マユを問い詰める。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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