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ラブストーリー

【犬が取り持つ恋もある:番外】彼が彼女にキッスした <前編>

   

*『犬が取り持つ恋もある』番外編

Akira’s Christmas第二弾

雪が積もった、一段と冷え込んだ朝。
雪かきをしていると、ゴンの散歩に出てきた伸樹に顔を緩ませた佐和子。
付き合いも順調、そう思っていた矢先に、学校で由梨菜に睨まれた。
その意味が分からず、親友の順子に聞くと、思いがけない事を言われ顔を苦くした……。

 

 ベッドから抜け出すのが、いつもより辛いなと思った朝。佐和子は身体を転がしてようやくベッドから落ちた。

「いったぁ……」

 打ち付けた腕を摺りながら、ゆっくりと立ち上がりカーテンを開ける。

「……雪」

 一面真っ白になっているその景色に、うんざりした顔をした。
 四季がハッキリしているこの土地では、当たり前に冬になれば雪が降る。積もった雪を見ても、ただ溜息が出るだけだ。

「雪かきしなきゃ……」

 のらりくらりと着替えを済ませて、佐和子は一階へと降りた。そしてリビングに入って全てのカーテンを開けた。
 チラリと見やった隣接している和室。佐和子の母、聖子はまだ寝ている。知り合いの飲食店で夜中まで働いている為、朝はいつも佐和子一人だ。だが、いつもと違うリビングの様子に、佐和子は瞬きしていた。
 いつの間に、そう思って顔を緩ませる。テレビの上に飾られた、小さなクリスマスツリー。それに近づいて、飾られている星を軽く突いた。

「今年はどうなるのかな……」

 後一週間後と迫ったクリスマスイブ。
 つい最近、佐和子には恋人が出来た。社会人であり、佐和子の高校の卒業生でもある。すぐ近くに住む、ゴンという犬を飼っている伸樹。
 初めて迎える恋人がいるクリスマス。佐和子は少しずつ浮き足立っている気持ちを抑え込みながら、朝食の支度と弁当を作り始めた。

 時計を見上げて、佐和子はコートを着て手袋を着けた。そして、一段と冷え込んでいる外へと出る。身震いして、玄関先に立てかけてあるスコップを掴むと、道路までの通り道の雪を掻き始めた。

「わぉんっ!!」

 犬の一吠えが聞こえて、佐和子は手を止めてそちらを見やった。

「はよ、佐和子」

 飼い犬のゴンを連れて近づいてきた、佐和子の彼氏、伸樹は、寒さに肩を竦めながら微笑んだ。伸樹は佐和子の前に立つと、髪に掛かっている雪を軽く払う。すると、いきなりゴンが二人の間を割って佐和子に飛びついた。

「ぅわっ! ゴン、待ったぁ~!」
「こらっゴンッ!」

 佐和子に飛びついて顔を舐めようとするゴンを剥がして、伸樹は苦笑した。

「今日は、俺オフ」
「いいなぁ、アタシは学校」

 そう言って、佐和子は腰に手を当てて不貞腐れる。すると、その尖らせた唇に、伸樹の唇がリップノイズを響かせて触れた。その瞬間、寒さの所為ではなく佐和子の頬が赤く染まった。

「迎えに行ってやるよ」
「うんっ!」
「頑張れよ、あと少し」

 佐和子は頷いて、途中だった雪かきを再開した。伸樹はゴンを連れて散歩に出掛ける。それを時々目で追いながら、佐和子は雪かきを済ませて、家の中に戻った。
 鞄を持ち、もう一度外に出た佐和子は、鍵を閉めて学校へと向かった。

 

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