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ラブストーリー

【犬が取り持つ恋もある:番外】彼が彼女にキッスした <中編>

   

*『犬が取り持つ恋もある』番外編

佐和子を迎えに行った伸樹だったが、一向に姿を見せない事に疑問を感じた。
その時、前に見た顔を見つけて呼び止めたが、思いがけない言葉に伸樹の怒りがこみ上げた…。

 

 校門前で佐和子を待っていた伸樹は、学校の敷地内から出て行った車を、何気なくバックミラーで眺めていて眉を寄せた。
 どこかで見たような車だと思いながら、ちらほらと下校をしている生徒を見ておかしいと思い始めた。
 必ず佐和子は我先にと出てくるのだ。少しでも見られたくない為に。その佐和子が出てくる気配はなく、胸がざわついた。すると、以前見かけた顔を見て、伸樹は窓を開けてその生徒を呼び止めた。

「ちょっと、そこの子!」
「はい? あ、佐和子の。こんにちはー」

 伸樹が呼び止めたのは順子だ。車に駆け寄ってきた順子から、思いがけない言葉が飛び込んできた。

「佐和子のクラス、とっくに終わってますよ?」
「マジで?」

 眉を寄せ眉間に皺を作った伸樹は、何かを考えるように一点を見詰めた。すると、順子までが顔を顰めた。

「あー……いや、ないとは思うんですけど。最近、ちょっと鬱陶しい先輩が佐和子に目をつけてるというか……」
「何……? 野郎っ……! あ、サンキュ」

 伸樹は、順子に声を掛けて直ぐに窓を閉めて車を走らせた。
 さっき引っ掛かった車は、やはり以前見た事がある車だったのだ。初めて佐和子を迎えに来た時に、あの車があった。あの時にも、鎌田が佐和子にしつこくしていた時だ。
 さっき出て行った車を探して、伸樹は車を走らせる。ただ、もう既に陽も落ちて辺りは暗い。車を探すのは困難を極めた。ナンバーも覚えてはいない。
 信号が赤でブレーキを踏んだ時、伸樹は歯軋りした。闇雲に探したって見つからないのは分かっているが、ただ黙って佐和子が帰ってくるのを家で待つ気にはならない。だが、ナンバーも覚えていないのだから、探しても見つからないのだ。

「……っくしょぅ!! 何かしやがったらっ……」

 バンッとハンドルを叩き、伸樹は眉を吊り上げながら家へと向かった。一度車を置いて、佐和子の家のチャイムを鳴らした伸樹。もしかして、そう思った僅かな望みを持って。
 すると中から佐和子の母が顔を出した。

「あら、伸樹君。佐和子まだよ?」
「……そうですか」

 やはりと思いながらも、まだ戻ってないところを見ると、まだ鎌田と一緒なのだと知って最高に気分が悪くなる。だがそれを出さずに、伸樹は「じゃ、後でまた来ます」と自宅に戻った。

「わぅっ!! ワンッ、わぉんっ!!」
「ゴンッ!? 待てっゴンッ!!」

 ドアを開けた瞬間、ゴンが飛び出してきたのだ。佐和子の事で頭が一杯だった伸樹は、咄嗟に反応が遅れ、ゴンを掴まえ損ねた。

「ちくしょっ……! 厄日かよっ、今日は!!」

 慌ててゴンを追いかけた伸樹だが、ゴンのスピードに敵うわけもない。途中で走るのを止めた伸樹は、上がりきった息を整えながら雪を蹴り上げた。

 

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