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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(28)

   

会社の机の中に、ワザと気づかれるように入れられていた智美のあられもない姿の写真。会社という閉鎖的な空間の中に突然現れた証拠写真に、創は亮介が自分の身近にいる人物だと気が付いた。
 
創は亮介の正体を暴くべく、親しい友人と亮介を重ね合わせてみるのだが……。

 

秘密(28)

『亮介は俺の知り合いか……』

 智美のあられもない姿を見たことで怒りの感情が湧き起こると思っていた。だが、俺は意外に冷静だった。奴なら……亮介なら俺を苦しめるために手段を選ばないという思いが心のどこかに有ったのかもしれない。今置かれている状況を、冷静に分析し始める自分がいた。

 ここに写真があるということは、亮介はこの会社に自由に出入りできる人物だということだ。しかも俺の家庭内のことを知っている人物に限られる。智美を利用して俺に対する恨みを晴らそうとしているからだ。
 俺に近い人物といえば、雄一郎、誠、マユ……あとは長瀬課長。他に親しくしている人はあまりいない。

 今の時点で一番怪しいのは雄一郎だ。奴は出会い系で人妻と出会い、よく会っていると誠が言っていた。営業で外に出たときは、平日といえども昼間にこっそり智美に会うこともできる。でも、誠が撮ってきた、智美と亮介が密会している写真を見る限りでは、亮介が雄一郎だとは言い難い。誠もあれは雄一郎ではなかったと言っていたぐらいだし……。

 誠はどうだ? いや……誠は亮介ではないだろう。あいつはいつも俺に協力的だ。智美が浮気している証拠を掴む時も、あいつは進んで協力してくれたし、何よりあいつは智美と亮介が会っている現場にいて、その証拠をカメラで押さえてくれたのだ。誠は亮介ではないと断言できる。

 長瀬課長はどうだろう?
 あの人柄のよい長瀬課長が、人を貶めるようなことをするだろうか? 長瀬課長の人柄からそれを想像することはできない。でも待てよ……長瀬課長は最近会社にいないことが多い。決まって平日の昼間に。

それにマユが言っていた言葉も引っかかる。課長はどうして郵便局に頻繁に足を運んでいるのだろう? 先日送られてきた書留は課長が立ち寄っている郵便局であることが分かっている。雄一郎同様、長瀬課長も疑った方がいいのかもしれない。でも……すっきりしないな……。

 亮介に関する情報があまりにも少なすぎる。奴の正体を探ろうとすればするほど色々な可能性が浮かび上がり混乱する。奴が俺に近い人物で有ることは確かなのだが……。

 朝早く出勤してきたマユに声を掛けられるまで、俺は誰もいないオフィスの中で亮介が誰なのかを考えていた。

「今日の夜、お話しませんか?」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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