幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

【犬が取り持つ恋もある:番外】彼が彼女にキッスした <後編>

   

*『犬が取り持つ恋もある』番外編

イブの日、普段とは違う服に着替えた佐和子。
クリスマスという事で、聖子が用意してくれた物だった。
見慣れない自分の姿に、伸樹が引かないだろうかろ不安になったが、「似合う」と言ってもらえて、嬉しくなった佐和子だった。

佐和子の家にゴンと共に来た伸樹は、薄く化粧した佐和子に照れくさくなりながらも、ポケットから小さな箱を取り出して、それを佐和子にプレゼントした…。

 

 いつもより早くに目覚めた佐和子は、まだ薄暗い部屋のカーテンを開けた。窓の外は、大粒の綿雪がゆっくりと落ちてきていた。
 風もなく、ただ静かにゆっくりと。
 その雪をしばらく眺めていた佐和子は、早く夜にならないかと伸樹の顔と声を思い出しながら顔を綻ばせた。

 着替えを済ませて静かにリビングに入った佐和子は、カーテンを開けてキッチンに入った。二人分の朝食を作って、聖子の分は冷蔵庫に仕舞い、自分の分は早々に平らげた。
 顔を洗って歯磨きを済ませてから、佐和子は一度自室に戻った。そして服を着替える。再び着替えた服は、いつもと違う服。
 普段の佐和子は、シンプルな服を好む。制服から着替えるのは、いつもジーンズにカットソーかチュニックだ。

「なんか……恥ずかしいなぁ……」

 着てみてから、自分を前後ろと眺めて眉を下げる。普段と違いすぎる自分に引かないだろうかと、変な不安が湧き上がった。いつもの佐和子からは想像がつかないような物だ。
 その服とは赤のワンピース。堅苦しい物ではなく、胸元がファーで飾られていてキャミソールドレスのような感じだ。それにワンピースと同じ丈くらいのフレアーなカーディガン。
 クリスマスだからと、聖子が佐和子の為に用意したものだ。
 それこそ渡されて広げた瞬間には可愛いと喜んだのだが、いざ自分が着てみれば……というギャップに気後れしてしまう。だが、折角プレゼントしてくれた服だ。聖子の為にも着たかった。
 着てから一階へと下りてリビングへと入ると、聖子がソファに転がっていた。

「もぅ……、お母さん、ベッドで寝なよ」
「だぁってぇ……、って、佐和子似合うね~」

 佐和子の姿を見て、聖子が寝ぼけ眼をパッチリと開く。そしてワンピースを触りながら笑顔を見せた。その聖子の反応に、佐和子が照れくさそうに笑った。

「伸樹君、惚れ直すんじゃない?」
「直すって何よ」

 ムッとしながら、キッチンに向かった佐和子。もう惚れてないみたいじゃないかと、冷蔵庫に仕舞った聖子用の朝食を取り出してレンジで温めた。

「料理するなら、ちゃんとエプロンしなさいよ?」
「分かってる」

 大事な服だ。伸樹に見せる前に汚したくはない。

「佐和子、お母さん今日は4時には出るから。伸樹君も早めに呼んであげなさないな」
「そんな早いの?」
「早めに開けて、淋しい一人もん達が集まって乾杯よ」

 声を上げて笑った聖子に、佐和子も苦笑する。そして、ふと思い出してテーブルに皿を置いた佐和子は、聖子を見た。

 

-ラブストーリー


コメントを残す

おすすめ作品