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SF・ファンタジー・ホラー

能力バンク 即時融資課(下・前編)

   

能力バンクからの「融資」を受けた吉田は、完全に全盛期の動きを取り戻していた。しかも、持久力の向上までなされていたため、疲労を感じることなく、その才能を、存分に発揮できるようになっていた。

復帰戦のリングで、吉田と相対した折原は、完全に調整不足だった。

吉田は、友人に対して、容赦なく攻め込んだ。それは、勝負を超えた、破壊的な攻撃だった。

残酷な試合の光景は、天才吉田の復活を強力にアピールすると同時に、ボクサーや人間としての尊敬の念を失うことを意味していた。

試合で、圧倒的な強さを見せつける度に、吉田は孤立していく。

不遇の中で、だらだらと練習していた吉田に声をかけてきたのは、見知らぬ紳士を伴った、能力バンク行員、豊橋だった。

 

 金剛石ボクシングジム。
 日本でも名門のジムである。
 世界戦やその前哨戦などのTV中継でも、頻繁に名前がアナウンスされることも多く、知名度も高い。
 そのため、全国各地から一旗上げようとジムに入ってくる若者も少なくない。
 主力選手たちがまとまって練習する時間帯ともなると、報道関係者や、練習生、見学者によって、ジムは大いに賑わいを見せる。
 しかし、真剣さと熱気に満ちあふれるジムの中で、練習生たちの注目を集めていたのは、世界チャンピオンの松尾や、次期世界戦挑戦者の柏木ではなく、吉田だった。
 吉田が、サンドバックを相手に見立てて、素早く左右のフットワークを使い、パンチを繰り出すたびに、ジムを支配する熱気の何割かが、吉田に対して注がれる。
「おお、吉田さん、すげえ……まるで松尾さん、いや、それ以上だよ」
 などと言う囁きが聞こえてくるたびに、吉田は頬の緩みを隠さねばならなかった。
(ま、当然だよ。このステップもコンビネーションも、俺が松尾に伝授したんだからな。体力を消耗するから封印していたけど)

 

-SF・ファンタジー・ホラー

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