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ラブストーリー

LOTUS 〜Next to Narita 2〜 <後>

   

「成田くん、わたし、るねるねとお姉さんは、きっと大丈夫だって信じてる。信じてるわ」
「ありがとう」
「よし、行け、光輝。気をつけろよ」

LOTUS』 ―光輝×瑠音―
≪光輝*高等部1年生*2月≫

Illustration:Dite

 

 こーちゃんね、来週、学校のスキー合宿なんだ。
 だから来週は、ひなちゃんと2人で買い物に行く予定。
 ちょっと早いけど、バレンタイン用の買い物をするんだ♪

 今年のバレンタインは、生チョコにトライしてみよっかな。
 バレンタイン前に、実力テストがあるのがヤなんだけどさ(-_-;)
 じゃあ、またメールするね!  *RUNE*

「成田、大変なことになったな」
 野々宮くんから事情を聞いた葛西先生が、痛む腰のあたりを押さえて、よたよたと走って来る。成田くんはようやく顔を上げると、葛西先生に足早に歩み寄り、「帰らせて下さい」と頭を下げた。
「葛西先生、俺、帰りたいです。帰らせて下さい、お願いします!」
「帰るったって……いや、そりゃ先生も帰らせてやりたいよ。けどなあ、もうこんなに遅いし、吹雪いてきたし」
「葛西センセ、前橋! 遅いったってまだ8時過ぎだぜ、前橋まで行けばどーにでもなる! 高崎に出て新幹線乗ってもいいし、それがダメなら特急とか快速とか……とにかく前橋駅まで出れば、今夜中に帰れる」
 成田くんの申し出に戸惑う葛西先生に、野々宮くんが畳みかけるように言う。わたしも必死に路線図を思い浮かべ、いつもの駅に、前橋から来る快速が停まることを思い出した。
「そうです、先生! 湘南快速だったかな、前橋まで行けば、新宿行きの快速だってあるんです」
「そういや、湘南新宿ラインってのがあったな。本多サンの言う通り、たしか前橋が始発だ」
「先生、お願いします! 成田くんを、一刻も早く帰らせてあげて下さい! お願いします!」
「本多さん…………」
 葛西先生に頭を下げると、ななめ上から成田くんの声が聞こえてきた。今のわたしにできること、それは成田くんをるねるねとお姉さんのところに、1分1秒でも早く行かせてあげることしかない。続いて野々宮くんと沢渡くんも、葛西先生に頭を下げた。
「じゃあ、どうする? 下からタクシーを呼ぶか? 山奥だからな、すぐに来てくれるかどうか、わからんけども。先生たちも車がないから、送ってやれんし」
 行きのバスのなかではずっと若葉ちゃんたちとおしゃべりをしていたから記憶が曖昧だけど、高速を降りてから宿舎まで、一般道を1時間は走ったと思う。だとすれば、これからタクシーを呼んで前橋駅まで走ってもらうと、10時過ぎになってしまうかもしれない。つまり、成田くんにとっては、ここで相談をしている1分すら惜しいのだ。
「葛西センセ、とにかくふもとのタクシー会社に電話して、来てくれるかどうか聞いてみてもいいよな? ここでこうしてても、ラチ明かねーし」
「お、おう。じゃあ、そうするか」
 さすがは我らの野々宮くんと言うべきか、果断即決で動き出す。たしかにこのままだと、いてもたっていられなくなった成田くんが、「歩いてでも帰る」なんて言い出しそうだった。
「じゃ、オレ、行ってきますんで」
 そう言って、野々宮くんが宿舎に向かおうとしたときだった。
 ゲレンデのほうから、誰かの呼び声が聞こえてきた。
「どうしましたー?! ケガ人ですかー?!」
「あっ、利根先生!」

 

-ラブストーリー

Next to Narita 2<全2話> 第1話第2話

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