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ノンジャンル

ロマンスの神様

   

「♪いつか絶対出会えるよね……神様お願い♪」
 冬の定番ソングを口ずさみながら、僕は雪の山道で凍えかけていた。
 昔好きだった、スキーのCMでブレイクしたアイドル。いまは引退した彼女の居場所をきいて、僕はこの雪山にやってきたのだ。
 派遣切りにあって、明日が見えない苦しさから逃れるように。

 とっぷりと暮れた山道には、人も車も通らない。遂に僕は力尽きた。
 雪の中に倒れ込んだはずの僕が目を覚ましたのは、暖かな車の中だった。心配そうに僕を見下ろすその顔は……。

 失われたものは、白く、儚く、美しい。
 冬のラブストーリー、一話読み切りです。

 

「♪いつか絶対出会えるよね……♪」

 闇の中、山道に降り積もった雪だけが、月明かりにぼうっと浮かびあがっている。

「♪出会いたい 出会いたい 神様お願い……♪」

 毎年この時期になると流れてくるウィンターソングを口ずさみながら、僕はその雪の上を歩き続けていた。

 人家の灯火はまったく見えない。雪山の中を這うように続く上り坂は、まるで永遠の闇へと続いているようだ。
 一応は舗装された県道なのだが、足元の雪をずぼずぼと踏みしめなければ前に進めない。

 北国の山道を、夜に一人で、しかもこんな軽装で歩くなど、自殺行為だと人は言うだろう。
 なぜこんなところを歩いているのか。
 実のところ僕だって、好きこのんで歩いているわけじゃないのだ。

 少し長い話になるけど、良かったら聞いてもらいたい。
 なにせ、ザクザクと歩いても歩いても、人工の光がまったく見えてこないのだ。
 このままだと遠からず力尽きてしまいそうである。

 春になって雪の下から発見されたときのために、僕の無謀な行為のわけを誰かに知っておいて欲しいのだ。

 

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