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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

秘密-すれ違う二つの心-(33)

   

亮介から「話し合いたい」というメールが届く。
長瀬課長がいなくなった今、亮介である疑いの掛かる男は一人しかいなかった。創は約束の場所へと向かう。創の思った人物が、そこにはいた。

 

秘密(33)

 メールの続きには指定日時と、ある場所の名前が記載されていた。その場所の名前を目にした途端、激しい動悸が襲いかかる。書かれていたのは、亮介の彼女が自殺を図った湖のある、あの森だった。

 二人の決着の場所を、因縁の場所に指定した亮介。奴の正体が長瀬課長ではなかったということは……。

 頭の中に最も疑いのある男の顔が浮かぶ。全くそしらぬ顔をしながらいつも俺の近くにいたあいつの顔が……。

 亮介が指定してきたのは、翌日の夕暮れ時だった。その日、俺は会社を休んで目的の場所へと向かった。

 昼過ぎに家を出た。近所にあるインターから高速道路へと入る。街から車をとばして約三時間。あの日以来決して近づくことのなかった地へ、俺は十数年ぶりに足を踏み入れた。

 日が傾くにつれ、気温も徐々に下がってくる。ここ数日の、季節はずれの寒波は過ぎ去っていたとはいえ、日の光がないと少し寒い。昼前から降り出した雨が車のフロントガラスを打つ。いつもよりも薄暗い午後五時。俺は森の入り口近くにあるペンションのそばに車を止めた。

 傘を持って出なかった。車を離れ森の入り口へと駆け出す。常緑樹の生い茂る森の中は、幾分濡れずにすんだ。
 
 森の中にできた細い道。この道を行けば森の深くにある湖へとたどり着く。だが亮介が指定したのはその場所ではない。湖にたどり着くまでの道の途中で待っていると、奴からのメールには記されてあった。

 細い道をしばらく進むと、割と開けた場所が見えてきた。木々が少なくなり、空から落ちてくる雨の滴が俺の体を濡らし始める。雨などお構いなしに、太い幹の側で奴は俺の姿をじっと見つめていた。
 一歩一歩、奴へと近づく。奴は俺の顔を見ると、にこりと笑った。

「創……待っとったよ。なあ創……もうこれ以上は……俺がこんなこと言うんもなんやけど……ここで終わりにしようや」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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