幻創文芸文庫 (β)

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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【4】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

塾からの帰り、電車の中でみちるは再び過去世のものらしき夢を見た。
美しい青年武士が四人、「源氏につくか、平氏につくか」という話をしている夢を。

駅を出たところで香子と会い、二人は一緒に帰ることにする。その途中、またも怨霊たちが出現して…。

 

 方々が簡略化され、全体に質素ながらも、京の公家の邸宅の雰囲気を摸した館はそれなりに品があり、居心地も悪くない。
 築山(ツキヤマ)と小さな池のある庭に面した広縁に直垂(ヒタタレ)姿の若者が四人、くつろいだ様子で腰を下ろして話している。
「それで、父上はなんと答えられました?」
 と訊ねたのは、長峰太郎次郎友興。小太郎興国と同じく長峰太郎武興(タケオキ)を父とする。
 四人の中で最も年長の小太郎が、意味ありげな微笑を弟に向けてから、返答する。
「父上は、こうお答えだった。『我らは坂東武者。足利式部大夫や下野守(シモツケノカミ)義朝(ヨシトモ)さまのころより源氏に縁(ユカリ)のある身なれば、兵衛佐(ヒョウエノスケ)どのにお味方するが筋。――なれども、家の繁栄存亡がこの機に懸かるとなれば、心の底にては、兵衛佐どの有利ならば鎌倉に、都の平氏有利ならば平氏方にとなびくつもりでいるのがよかろう』と」
「叔父上はその言に納得されましたか?」
「無論のこと。三郎どのも『まさにそれこそ弓矢取る家の常道常道』と、上機嫌であられた」
 これを聞いて、長峰三郎二郎と三々郎の兄弟が顔を見合わせてほほえむ。三郎二郎らは、太郎次郎が「叔父上」と呼んだ長峰三郎恭久(ヤスヒサ)の子息であって、小太郎ら兄弟とはいとこの仲だ。
「なにはともあれ、一族郎党がいがみ合っては話にならない。伯父上たちの心が一つであれば心安く武芸も磨けるというものだ」
 三郎二郎の言葉に、三々郎もうなずいて、
「とりわけ、我々には衣伏山(キヌブセヤマ)の御曹司(オンゾウシ)をお守りするという大事もあります」
「まったくそのとおりだ、三々郎。御曹司をお守りし、しかるべき時をもって兵衛佐どのにお引き合わせするのが、長峰の家の使命の一つ」
 小太郎の言葉を受けて、太郎次郎が、
「なれば、やはり兵衛佐どのが勢力を伸ばされ、いずれしかるべき官位を得て平氏の代わりに都をも治めるようになるのが最も望ましいと言えましょうな、兄上」
「それはそうだが、そうならなかった際には、長峰は勢い盛り返した平氏のもとへ参ずるまで。そして、表舞台を去った兵衛佐どのに代わって新たな源氏の頭領となられるべきお方がここにおりますと、御曹司を世に披露すればよいことだ」
「なるほど、確かに」
 三人は、小太郎の主張にめいめい首肯した。

 

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