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SF・ファンタジー・ホラー

能力バンク 即時融資課(下・後編)

   

世界チャンピオンとなった吉田は、周囲から厚遇され、満足していた。そんな吉田の王座統一戦の相手は、旧友、折口だった。かつて吉田から受けた生々しい傷跡が残る折口の写真を見せられても、良心の痛みを感じない吉田だったが、試合当日、予想だにしていなかった事態に直面することになる……

 

「チャンピオンの、勝利に」
 ノンタイトル戦から一時間後、吉田と豊橋、そして、ZBPA統括者、高崎 良一は、リングを見ながら、ワインで乾杯していた。
 百人ほどが収容できる、大きめのレストランに設置されたリングで試合をしていたのである。客は、食事と酒を楽しみつつ、観戦をするというわけだ。
「どうかね、我が団体のルールは。極めて安全だが、スリリングでもあったろう」
 上質のイタリアワインを飲み干し、ペペロンチーノをかき込んでいる吉田に、高崎が声をかけてきた。吉田は、笑顔で頷く。
「ええ。気に入りました。顔面を完全に防御するヘッドガードに、腹部の急所を守るプロテクター。これなら誰でも安全に、ボクシングを楽しめるでしょうね。しかも、緊張感は、普通のリング以上だ」
 吉田は、ZBPAの特別ルールを思い出していた。厳重な防護がなされているため、怪我の心配はまるでない。
 だが、一方で、累計のパンチヒット数の差が十発以上に達したり、強烈な一撃を決められたりした時点で、即座に敗北が決定してしまう。
 今日の相手は、新人としてもどうかという実力しかない選手だったが、それでも吉田は、背中と額に冷や汗をかき続けていなければならなかった。

 

-SF・ファンタジー・ホラー

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