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ラブストーリー

ギフト

   

【可視光線】その後。

久しぶりの待ち合わせ。
遅れてしまった朔に須王が言った。

「朔のくれるものだったら、何でも嬉しい」

寒空の下。
須王のくれた、
ギフト。

 

 18時58分。
 終業時刻から1時間半経過。
 それでもなかなか帰れそうになくて、溜息。
 くだらない会議は、終了予定時刻を大幅に過ぎているというのに、未だにだらだらと続いている。
 これだから、事務系の人間との会議はいやなんだ。
 ブレインストーミングにすらならない。
 などと内心思いながらも、朔は表情には出さない。

(どこかの企業みたいに、時間になったら消灯するシステムにすればいい)

 そう提案してみても、きっと黙殺されるだろう。
 仕事に就いて1年程度の人間の提案など、誰がすくい上げるものか。
 朔が入社した企業は、新人の意見など聞く耳を持つ社風にはない。
 就職する際にも、そのへんにためらいがあったが、今まで大学で学んできたことを発揮するには、この企業がもっとも有効だと感じたから入社したわけで。

(こんな会議に出るためじゃないんだけどな)

 そう不満に思ってしまう。

(それに……)

 きょうは須王と待ち合わせをしているのだ。
 なのにこれはまずいだろうと思う。
 山根須王。
 元、岸本須王は、今年の春に8年越しの片恋いの末にものにした、朔の大切な存在だ。
 医学部に進んだ須王は、朔とは違い未だ学生という身分で。
 研修やらなにやらで忙しく、朔は朔で、入社1年目の新人技術者ということで。
 なかなかふたりの時間というものを持てずにいた。
 だからこそ、この日をどれだけ……。
 そう思うと目の前にいる先輩諸氏を憎らしく思ってしまう。

 

-ラブストーリー


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