幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【8】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

野平五郎の手勢を、紅子と鴇子が蹴散らす。野平五郎は「次回は手を変えよう」と独りごちて姿を消した。
鴇子が、紅子と藍子がこの場に間に合ったことについて問い、姉二人はその理由を話す。

その晩、みちるは初めて、自分が“衣伏山の御曹司”となって登場している過去世の夢を見る…。

 

 仕掛けたのは、意外にも紅子だった。
 強気な斬り込みであっという間に二体を倒した。そのまま体勢を整えて、浮き足だった様子の敵にまた斬りかかる。大ぶりの刀は頼もしい紅色に光り輝き、刃に触れた怨霊どもを霧散させていく。
 きれいなピンク色のカットソー素材のチュニックが、紅子の動きにつれて、なびき、揺れる。裾に付いた共布(トモギレ)のフリルが翻弄される。黒のレギンスに包まれた、形のいい長い脚。花飾りの付いたバレエシューズをはいた足もとは、紅子の体を瞬時に最適な場所に移動させるために素早く動きつづける。
 わずかなくせもない黒い長い髪が宙に躍る。
 その紅子から少し離れた場所で、鴇子も刀を振るっている。紅子の豪快な太刀さばきに比べ、鴇子の太刀筋は華やかかつ、鋭い。まるでそれは、紅色と鴇色の、色の対比のよう。
 さほど時をかけずに雑兵すべてを片づけると、紅子は隙のない立ち姿のまま切っ先を野平五郎へと向けた。剣戟の成り行きを厳しい面持ちで見守っていた五郎は、刃が近づこうとする前に一歩身を退(ヒ)き、
「なるほど、長峰悪若四天王の武技は時を超えても見事な腕だ。次回は少し手段を変えるとしよう」
 独りごちるようにそう言うと、そのままもやに溶け込むように消えていった。

 みちるの前に立ちはだかるようにして抜き身を提げていた藍子が、ホッとため息をついた。
 藍色の光る刀を宙へと放し、藍子はほほえんで振り向く。
「みちる、もう大丈夫よ」
「うん……」
 紅茶とクッキーの入った袋と、鴇子のトートバッグを持ったまま、みちるはゆっくりと立ち上がった。藍子が「鴇子のバッグ、貸して」と言って手を差し出したので、トートバッグを渡した。
 藍子は、シンプルなモノトーンチェックのシャツワンピと、その下に、レースを重ねた黒いペチパンツをはいている。ごく普段着なのに、ハッとするほど目を引く。みちるは親友の姿に寸時見惚れて、それから我に返ってかすかに頬を染めた。
 二人のもとへと、こちらも武器を手放した紅子と鴇子が、落ち着いた足取りで近づいてきた。
 灰色のもやも見る間に晴れていく。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16